75: ◆QlCglYLW8I[saga]
2021/10/02(土) 19:38:25.79 ID:gfGIXtqkO
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「……ここは」
「そ、牧場」
車を降りると、家族連れが次々に入場門に向かっているのが見えた。小さめの観覧車が、ゆっくりと回っている。
「何か、意外だな。てっきり、富士急かどこかに行くかと思ってた」
「そういう刺激もいいけどね。たまには、こういう何もしないでぼーっとするデートもよくない?」
俊太郎には、今日の行き先は告げないでいた。少し物珍しそうに、彼は辺りを見渡している。
「何か、懐かしいな。実家の近くにも、こういう牧場があった」
「群馬だったっけ。伊香保の方にも,似たようなのあったよね」
「小学校の遠足の定番だったな」
少し、俊太郎の表情が緩んでいる。あたしは、ここを選んで正解だったかもと思った。もちろん、俊太郎の出身を踏まえた上での選択だ。
童心に戻る、というと大袈裟だけど、リラックスしてもらうならこういう所の方がいいかもと考えたのだ。
あたしは、レクサスの後部座席からリュックを取り出した。
「そういえば、それ何が入ってるの」
「ふふん、それは後でのお楽しみ。じゃ、行こっか」
あたしは俊太郎の手を引いた。
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