100日後に死ぬ彼女
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74: ◆QlCglYLW8I[saga]
2021/10/02(土) 19:37:51.96 ID:gfGIXtqkO




何か,様子がおかしい。




俊太郎に会ってすぐに、あたしは気付いた。いや、会う前からなんとなく妙な気がしていた。

火曜の夜、あたしから送ったLINEへの返信は、やけに遅かった。そして、「土曜日はうちで過ごさないか」と訊いてきたのだ。
まったりおうちデートというのは、決して嫌じゃない。適当に二人でYouTubeを見て、そのうちそういう雰囲気になり、何回もセックスしてから解散する。多分、いつものそういう感じだろう。
ただ、インターンが終わってからの俊太郎は、何か変だ。悪夢に悩んでいるというのは前からだったけど、さらに何か思い詰めるようになっている。

遠出を彼に持ちかけたのも、いつもと違う所で過ごして、気分転換してもらいたかったからだ。新学期になれば、また忙しくなる。このままでいるのは、良くない予感がしたのだ。
それがおうちデートでは、普段と大して変わらない。俊太郎に甘えさせても、それはその場しのぎだ。その時は良くても、またすぐに悪くなる。

だから、あたしは強引に彼を説き伏せ、こうやって車で中目黒に来た。でも、これは正しかったのか。俊太郎の顔を見たあたしは、すぐに不安に駆られた。

「どうしたの?……目の下、すごい隈だよ。また、例の悪夢?」

「いや……そうじゃないんだ。でも、寝れてない」

「えっ……今日、どうする?具合悪いなら、俊太郎の家に行ってもいいよ?」

俊太郎は、少し考えた後で強く首を振った

「……大丈夫。それに、色々調べてくれたんだろ?由梨花に悪い」

「本当に、身体は問題ないの?」

「うん」

そう言うと、俊太郎は助手席に座った。無理をしているのは、明らかだった。
「何かあったの?」と問い詰めようとして、あたしはやめた。普段なら、きっとそうしていただろう。でも、そうすると俊太郎を追い詰めることになる気がしていた。もう、1年の付き合いになる。俊太郎のメンタルがそこまで強くないのは、分かっていた。

あたしは、iPhoneを操作した。接続されたカーステレオから、昔のロックバンドの曲が流れる。


♪Is this the real life?
♪Is this just fantasy?
♪Caught in a landside,
♪No escape from reality……


「……『ボヘミアン・ラプソディー』か」

「そ。Queen、好きでしょ?」

俊太郎は無言で頷く。音楽を流していないと、沈黙に耐えられない気がしたのだ。

あたしはハンドルを首都高方面へと切る。目的地の房総半島までは、渋滞さえなければ2時間弱で着くはずだ。



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