52: ◆QlCglYLW8I[saga]
2021/09/26(日) 19:48:08.24 ID:YjVwo2WmO
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「……くっ……」
もう、10年も同じ夢を見ている。にもかかわらず、一向にこの最悪の目覚めには、慣れそうもなかった。
横の妻は、静かに寝息を立てている。彼女を起こさないよう、私はキッチンへと向かい、睡眠薬のレンドルミンが入った紙袋を手に取った。こいつとも、もう10年の付き合いになる。
コップに水を入れ、錠剤を流し込む。年々効きは悪くなっているが、それでも1時間以内には眠れるだろう。私は寝室に戻り、ベッドに潜り込んだ。
妻からはずっと、ちゃんとした睡眠障害の専門医に診てもらうように言われている。私もできればそうしたい。
しかし、それは絶対にできない。この悪夢の原因は、何より一番私が理解している。
もし医者に診てもらうことになれば、この原因を話すことになるだろう。それは、私が築いてきたものを、全て失うことに繋がる。
悪夢の原因、それは……
そこで、睡魔が襲ってきた。
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