【デレマスss】木村夏樹「ファースト・パッセンジャー」
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名無しNIPPER
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2021/09/15(水) 22:25:34.14 ID:TCAbkAPj0
各部の発表が淡々と進み、吹奏楽部の心地よい音色をBGMにウトウトとしていた俺だったが、その直後の叫び声で飛び上がることになる。
「軽音楽部ですよろしくぅぅぅ!!!!!!」
突然のシャウトによって一瞬にして体育館がライブハウスへと化した。雑談をしている者も、スマートフォンでアルバイトの求人を探している者も、英単語帳を熱心に読み込む者も、全員が動きを止めてステージに注目した。
以下略
AAS
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名無しNIPPER
[saga]
2021/09/15(水) 22:26:16.43 ID:TCAbkAPj0
その日の放課後、早速入部届を出しに行った。オリエンテーションでは演奏するだけで勧誘の言葉もなく退場してしまっていたので、ここで初めて部活の詳細を聞く。どうやら都内の軽音楽部としてはかなり有名で、活動も活発らしい。入部届を出した1年生は殆どが何かしらの楽器経験がある人だった。
仮入部期間が終わると、1年生同士でバンドを組むことになった。未経験者の俺を誘ってくれる人は誰一人としていなくて、結局俺と同様に未経験者の2人と余り者同士でバンドを組むことになった。
練習しようにも未経験者だけでは何をしたらいいのかも分からないし、俺はギター希望で、他の2人はベースとドラム希望だったから、ボーカルもいなかった。最初から躓いてしまった。
以下略
AAS
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名無しNIPPER
[saga]
2021/09/15(水) 22:26:45.34 ID:TCAbkAPj0
それからというもの、楽器や練習本を買いに楽器店に連れて行ってくれたり、毎日の練習で初心者の俺たちを教えてくれたり、おすすめのロックバンドを教えてもらったりと、さんざんお世話になった。もちろん元々所属していたバンドの活動もしっかりと行っていて、路上ライブをするときは手伝いがてらよく見に行かせてもらった。
木村先輩は見た目はチャラついていて少し怖いが、優しくて面倒見のいい人だった。
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名無しNIPPER
[saga]
2021/09/15(水) 22:27:16.79 ID:TCAbkAPj0
――その先輩とは今でも連絡を取っているのでしょうか?
いや、先輩は僕が入部した年に退部しちゃって、その後はめっきり話さなくなっちゃいました。同じ学校には通ってるので話そうと思えばいくらでも話せたんですけど、なかなかタイミングが合わず……。LINEのアカウントも変わってしまったみたいでもう連絡先も知らないですし、どこで何してるかも分からないです。この記事をどこかで見つけて、連絡してくれたら嬉しいですね。
――高校時代に一番印象に残っている出来事は何ですか?
以下略
AAS
8
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名無しNIPPER
[saga]
2021/09/15(水) 22:27:59.07 ID:TCAbkAPj0
木村先輩が退部したのは、確か10月頃だったと思う。
軽音楽部の活動は、思っている以上にハードだった。俺みたいな初心者は別として、他の部員には本気でプロになりたいと考えている人が殆どだったから、様々なオーディションに参加することが当たり前だった。
特に9月末にテレビ特番で生放送されるスター発掘番組の予選オーディションは、軽音楽部のすべてのバンドがエントリーすることになっている特大イベントだった。もちろんすべてのオーディションを勝ち進んでテレビに出るなんてことは滅多にないけど、番組自体の人気や注目度が高いこともあってこのオーディションを最後に引退する3年生の熱気はすさまじかった。
以下略
AAS
9
:
名無しNIPPER
[saga]
2021/09/15(水) 22:28:25.27 ID:TCAbkAPj0
そして、一次オーディションの当日になった。
「おい、大丈夫かよ? 顔真っ青だぞ?」
お決まりのリーゼントをバッチリ決めた木村先輩は、平気な顔でよくある棒付きキャンディーを舐めている。多分お気に入りのコーラ味だ。
以下略
AAS
10
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名無しNIPPER
[saga]
2021/09/15(水) 22:28:57.61 ID:TCAbkAPj0
その日のオーディション終わり、学校に戻って楽器の片付けをしていると木村先輩から駐輪場に呼び出された。そんなことをする人ではないとは思いつつ、でも殴られるかもしれないと思った。
「あの! 木村先輩すいません! あんなに練習見てもらったのに俺、頭真っ白になっちゃって……」
「いいっていいって。そんなことより、ほら、これ」
以下略
AAS
11
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名無しNIPPER
[saga]
2021/09/15(水) 22:29:31.65 ID:TCAbkAPj0
どれくらい走っただろうか、いつの間にか夕焼けの時間になり、東京湾が一望できる自然公園に着いた。
「いい景色だろ。アタシのとっておきの場所なんだ」
「……はい」
以下略
AAS
12
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名無しNIPPER
[saga]
2021/09/15(水) 22:30:07.94 ID:TCAbkAPj0
落選したバンドは、その後の数週間、勝ち進んだ先輩たちの手伝いをすることになる。学校外で場所を借りて練習をするときの楽器運搬などが主な仕事だ。そんなこんなで忙しく過ごした時間もつかの間、9月の中頃に最終オーディションの結果が出た。
最終オーディションに残っていた3年生のバンドは、残念ながら落選してしまった。しかし唯一、木村先輩がいる2年生のバンドが見事オーディションを通過し、月末の生放送に出演することが決定した。
仲間の演奏が日本全国に生放送される。しかも音楽プロデューサーの目に止まればプロとしてデビューができる。この事実に部員全員が色めき立ち、大騒ぎになった。後から聞くと、あまりの騒がしさに書道部から文句が来ていたらしい。そんなの知るか。
13
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名無しNIPPER
[saga]
2021/09/15(水) 22:30:36.14 ID:TCAbkAPj0
生放送当日、学校の体育館ではパブリックビューイングが行われた。といっても生徒と教師、保護者くらいしかいなかったけど。それでもミーハー心がくすぐられるのか、かなりの人が集まっていた。
そして、先輩のたちの出番が来た。
VTRでのバンドの紹介パートで高校の名前が出たときは、少しだけざわついた。VTRが終わっていざ、先輩たちが登場すると、かなりざわついた。間髪を入れずに演奏が始まる。
以下略
AAS
14
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名無しNIPPER
[saga]
2021/09/15(水) 22:31:21.83 ID:TCAbkAPj0
――倉部さんでもやはり始めたばかりの頃は苦労されたのですね。しかし、後にプロになる人に教えてもらったからこそ、倉部さんの才能が開花したのかもしれませんね。
そうかもしれません(笑)。確かに先輩の指導はすごく分かりやすかったですね。先輩はいろんな事情があって実際にプロになることは出来なかったんですけど、どこかでギターの先生とかをしていたら嬉しいな、なんて思っちゃいますね。
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