10: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/07/15(木) 20:54:48.73 ID:z2yJUgP30
「あたし、今日さくらちゃん家に泊まるから」
「は!?」
「だってあたしは、『徳川ひなた』だからねぇ」
11: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/07/15(木) 20:55:22.64 ID:z2yJUgP30
「いや、意味わかんないんだけど」
「まつりさんにお願いして、御両親の許可はもらってるよぉ」
「アタシの許可は!?」
「今もらうべさ、えへへ」
12: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/07/15(木) 20:56:01.84 ID:z2yJUgP30
「う。……ま、まぁ勝手にすれば」
「えへへ、ありがとうねぇ。今日はさくらちゃん部活だよね? あたしは先におうちにお邪魔してるからね」
再びパッと花が咲くように笑顔になり、そのまま軽い足取りで教室を後にする木下ひなた。
13: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/07/15(木) 20:56:49.19 ID:z2yJUgP30
―――
バレー部の練習を終えて家に着くころには、すっかり日が暮れていた。
夕飯が恋しくて、急いで家の鍵を捻ろうとしたところで、ふと手を止める。
14: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/07/15(木) 20:57:36.04 ID:z2yJUgP30
何故か姫モードの姉をスルーして現況を確認する。
台所で皿を洗っている母。リビングのソファーに座ってテレビを見ている姉と木下ひなた。二人ともパジャマ姿で寛いでいる。なんで。
父はまだ帰っていない。食卓の上に私の分であろう夕食。
15: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/07/15(木) 20:58:52.96 ID:z2yJUgP30
姉にピッタリ並んでソファに座る木下ひなた。
平均的な女性と比べて身体が大きい姉と、同級生と比べても明らかに身体が小さい木下ひなた。
素晴らしい納まりだった。素晴らしい納まりだったんだけど。
何故か手をつないでいた。
16: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/07/15(木) 20:59:58.09 ID:z2yJUgP30
ひなたに対しては罵倒の言葉が思い浮かばなかった。
とにかくペースを握らせてはならない。話の流れを切るために大げさに溜息をついて、一心不乱に夕食を掻っ込むことにした。
この夕食さえ食べてしまえば、後は自室に篭れば良いのだ。いつもより大きな口を開けて、いつもより素早く箸を動かした。姉とひなたが時々こちらをチラチラと見てきたが、無視して顎を動かした。
17: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/07/15(木) 21:00:31.64 ID:z2yJUgP30
―――
「ひなた、部屋いこ」
18: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/07/15(木) 21:01:38.55 ID:z2yJUgP30
「ふぁ……」
「明日も早いのかい?」
「土曜日だから午前練。ひなたは?」
「朝からまつりさんと一緒にレッスンだよぉ」
19: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/07/15(木) 21:02:12.58 ID:z2yJUgP30
「はーっ」
ベッドに身体を投げ出して天井を眺める。このまま目を瞑れば気持ちよく寝てしまいそうだ。
ひなたも敷き終えた布団にちょこんと座っていた。
20: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/07/15(木) 21:02:45.54 ID:z2yJUgP30
「お姉ちゃんのこと、嫌いかい?」
「嫌い。あの年で姫とか、恥ずかしいし」
「そっか」
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