結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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764: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/15(土) 23:43:40.28 ID:2z6G7I5Go


 木原数多や博士がいる二つの学区を跨いで建てられた倉庫。
 そこから約一キロほど離れたところにある大型車両用のパーキングエリア。
 その中に一台の大型トレーラーが駐車している。
 暗部組織『メンバー』の遠隔地からのサポートを任務としている構成員の一人。馬場芳郎がそのトレーラーの中にいた。

 トレーラーの中は部屋のような構造をしており、中には通信機器や分析用のコンピュータ、そしてメンバーが使用しているロボットの制御装置を積んでいる。
 電子制御で開閉する扉は防弾・防爆仕様で、彼がここの扉を自発的に開けることがない限り、外からの侵入を許すことはない。
 いわば、ここはメンバーの司令室のようなものだ。馬場芳郎はこの中で指示やサポートを行っている。

 そんな鉄壁の部屋にいる馬場は椅子から転げ落ちるかのように、床に尻もちをついていた。
 彼の目線の先は部屋の入り口の扉。扉が壁側にスライドし、外から冷たい空気を室内へ送り込んでいた。
 扉が開いている。それを我が目を疑うように馬場が見ていることから、彼がそれを開けたわけではないと思われる。

 彼の周りにはたくさんのモニターが設置されている。メンバーのサポート業務を行うためのコンピュータを使うためのものだ。
 ハッキング、通信の傍受、情報操作、レーダー、ロボットの制御、用途は様々。
 この部屋の要と言える数々のモニターだが、今は全て同じ画面が表示されていた。
 黒いバックに赤い枠ありの横文字で単語が一つ。『Locked』。
 馬場の存在意義が全て奪われたことを意味していた。

 部屋の外から、誰かが入ってきた。
 暗がりでよく見えないが、身長は一六〇センチくらい。体格や髪型からして少女だろうか。
 その誰かはゆっくりと、しっかりとした足付きで、馬場のいる方へと向かってくる。

 距離を取ろうとして壁を背中に擦りながら馬場が問いかける。


馬場「だ、誰だお前は!?」


 頭がテーブルにぶつかる。振動で上に置いていた二リットルペットボトルが床に落ちて転がった。
 中から炭酸の茶色液体が中から溢れ出ていく。


馬場「お前なのか!? ここの設備を掌握したクラッカーは!?」


 誰かは何も答えない。黙々と馬場との距離を詰めてくる。
 目の前と言える位置にその誰かが来た。
 モニターから発せられる淡い光に照らされ、その誰かの顔が浮かび上がってくる。


馬場「お、お前は……まさか!?」


 馬場芳郎はその誰かのことをよく知っていた。
 なぜなら先ほどまで、その少女のことをロボットのカメラ越しによく観察していたからだ。
 整った顔立ちで、茶髪を肩まで伸ばしている。
 数十分前まで床についていたのか、半袖のTシャツにショートパンツのルームウェアを着ていた。
 馬場は叫ぶ。その嫌というほど知っているその少女の名を。


馬場「――超能力者(レベル5)第三位!! 御坂美琴ッ!!」

美琴「…………」


 常盤台の超電磁砲(レールガン)と呼ばれる少女が。守るべき少女を彼の操作するロボットに奪われて右往左往しているはずの少女が。
 馬場の目の前に立ちふさがった。


馬場「なんでお前がここにいるんだ? お前に放った二〇機のグレートデーンは完全自動制御だ。僕の居場所を特定できるような要素は皆無だったはずだ。そういう風に対策したんだからな。なのに……なんでだッ!!」


 焦りと怒りが混じった表情で睨みつける少年。
 それに応じるように美琴も目を下に向ける。
 その表情は冷静だった。唇を横一文字で結び、表情筋が動いている様子がない。
 しかし、目だけは違った。まるで黒目が収縮しているようだった。そう思えるほど目を見開いていて、白目の面積が多くなっている。
 ずっと閉じていた少女の口が開く。





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