結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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735: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/08(土) 11:32:44.30 ID:Q+V+Oj11o


 スクールの二人組。『心理定規(メジャーハート)』と名乗る少女獄彩海美と誉望万化は、少年院の地下三階の通路を駆けていた。
 通路にはバタバタと警備兵と思われる男たちが倒れている。通路を走る海美が倒れた警備兵たちを横目に、


海美「この死体、独房まで続いていそうね。この道を誰かが通ったってことかしら?」

誉望「おそらく第一位スよ。あんなえげつない殺し方しそうじゃないっスかアイツ」


 誉望が言うようにその男たちは、決まって体にドリルのようなもので抉り取られたような傷を負っていた。
 胸が裂け、腹に大穴を開けて。


海美「まあ、そう考えるのが妥当ってところかな。というか垣根のヤツが早く来てくれないと困るんだけど。このままじゃ私たちが第一位の相手をしないといけなくなるよ」

誉望「ゲッ、そいつは勘弁願いたいっスよ。アイツ相手にして一〇秒以上立ってられる自信ねえっス」

海美「言っておくけど私のチカラもアテにしないでよ? 何となく彼、逆上タイプな気がするし」


 海美の能力は『心理定規(メジャーハート)』という精神系の能力だ。
 彼女は対象の持つ他人との心理的な距離を、すなわち信頼度や親密度などを観測し、測定して数値化することができる。
 例えるならある男が持つ恋人との心理的な距離は一〇、のような感じに。
 さらに彼女の能力はそれだけではなく、その数値を元に自分と対象との心理的な距離を自由に操作することが出来るチカラがある。
 彼女からすれば、見ず知らずの男と運命の赤い糸で結ばれた恋人同士にも為ることも、親を殺された宿敵同士のような関係性に為ることも、造作のないことだった。

 海美の言う逆上タイプというのは、戦意を奪うためにチカラを使って親密な関係を偽装しても、『可愛さ余って憎さ百倍』という思考になり余計に襲ってくる人のことを指す。
 実際、海美は一方通行に能力をかけたことはないが、彼女の勘がそうじゃないかと告げていた。


誉望「そんな状況で座標移動(ムーブポイント)を捕獲しろなんて、無茶言いますよねー」

海美「ま、最悪座標移動を私の能力で味方に付ければ何とかなると思うよ。彼女が相手なら第一位も全力は出せないでしょうし」

誉望「さすが心理定規さん。頼りになるっス」


 会話をしながら進む内に通路の終わりが見えた。
 その先にあるのは地下四階に繋がる階段。地下四階には地下独房まで繋がる隠し階段が存在する。
 目的地はもうすぐそこまで来ている。


誉望「――ッ、誰かいる!?」


 誉望の顔が強ばる。頭に付いた土星の輪のようなゴーグルに付いているケーブルの一本が大きく揺れる。
 彼の念動能力は様々なことに応用することができる。
 彼が今行っているのは、微弱な念動波を常に周囲に発することで周辺の物体の動きを感知するレーダー。
 索敵や不意打ちを回避するために使用していたチカラが、誰かを感知した。

 誉望の言葉を聞いて海美も警戒心を強める。
 銃撃、爆発、刺突、あらゆる襲撃を警戒しつつ二人は通路の先にある階段前の広場へと飛び出した。


 何も起こらない。


 おかしいと思い、誉望はレーダーに反応した誰かがいるはずの方向を見る。
 その先には壁伝いにベンチが置いてあった。おそらく看守が休憩するために置いているものなのだろう。
 ベンチの上に何か黒いものが横たわっていた。誉望はそれが何かを確認するために目を凝らす。

 それは少女だった。
 見た目は一二歳位。パンク系の黒い服で身を包んでいる。
 肩甲骨辺りまで伸ばした髪の毛の色は黒だったが、無理やり脱色させているのか先端だけ金色をしている。
 そんな奇抜な格好をした少女が、ベンチの上で自分の両手を枕にして寝ていた。まるで暇潰しに昼寝でもしているかのように。





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