結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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731: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/08(土) 11:29:00.84 ID:Q+V+Oj11o


数多「部下に情が移っただぁ? 新しい人員を補充するのが面倒だったからそのまま使ってやってるだけだ!」

数多「そこで寝ているクソガキに庇護欲が湧いただぁ? テメェは耳元でギャンギャン鳴く糞犬にそんな感情が湧くのかぁ? 俺には到底無理だねぇ!」

数多「『木原』のなり損ないだぁ? どこの誰が言ってんのか知らねえがそりゃ間違いだ。そもそも『木原』っつうのはなり損なえるモンじゃねえんだからよぉ」


 数多は頭を掻きむしりながら続ける。


数多「『木原』っつのは生まれた時点で『木原』なんだよ。んなことがわからねえで『木原一族』を語るなんざ、愉快で素敵で馬鹿馬鹿しいヤツだよテメェは」


 「まあたしかにぃ、円周は『木原』が足りてないのは事実だ。それは認めよう」と数多が補足する。
 それを聞いた円周が頬を膨らませながら、


円周「ひどいよ数多おじちゃん。生まれた時点で『木原』は『木原』ってさっき言ったよねー? だから私も立派な『木原一族』の一員なんだよ!」

数多「そんなこと言ってる時点で足りてねえんだよクソガキが」


 ギャーギャー問答している二人。まるで自宅でいつも通りやっているような他愛もないやり取りだった。
 そんな光景に博士は気にすることなく数多に問いかける。


博士「だったらなぜアレイスターを裏切ったのかね? 君が私の言ったことを否定するというのなら、その選択肢を取ったことがまったくと言っていいほど理解ができない」

数多「そりゃできないだろうな。アレイスターの犬に成り下がっているテメェじゃあな」


 博士たちが所属する『メンバー』は統括理事長アレイスターの直属の組織だ。
 その役割は任務内容の善悪に関係なく、アレイスターの手足として動くことである。


数多「テメェはあのガキにウイルスを打ち込もうとした理由は何か知ってるか?」

博士「……ウイルスを打ち込んだ最終信号の上位権限で妹達(シスターズ)を使い、AIM拡散力場の流れを誘導することで虚数学区を展開させることだろう。そうすることで『風斬氷華』は『ヒューズ=カザキリ』へと進化を遂げる」

数多「そうだな。だがそのウイルスの影響でガキは完全に壊れちまう。ミサカネットワークは崩壊し、妹達はただのAIM拡散力場を世界中にばらまくだけの電波塔に成り下がっちまうっつーことだ」

博士「まさか、君はミサカネットワークなどという玩具を守るためだけに裏切ったというのかね? アレイスターの求めるものを拒否してまで」

数多「残念ながら、正解半分だ」


 数多は鼻で笑う。まるで無知なものを見下すように。


数多「そもそもよぉ、必要なかったんだよ。あの任務自体がな」

博士「どういうことだ?」

数多「あん? お前知らねえのか? もしそうならとんでもないマヌケだっつーことになるんだがよぉ」

博士「だから、どういうことだと聞いている」


 ニヤニヤとした顔付きで数多が告げる。


数多「『風斬氷華』はそんなまどろっこしい方法を使わなくても、既に自分で『ヒューズ=カザキリ』へと変貌を遂げてたんだよ。九月三〇日以前からな」

数多「そんな状態で実験材料を無駄に使い潰してぇ、無駄な労力使ってぇ、何にも変わりませんでしたっつー無駄な実験をするなんざ、面倒臭せぇだろうが」


 その事実を聞かせられた博士は目を見開かせた。
 目の当たりにした数多は確信したように、


数多「そんな面見せるってこたぁ、ミサカネットワークの利用価値もわかってなさそうだな」

博士「……第一位の代理演算をさせて延命措置をさせていることか? それとも一〇〇三一人分の死の記憶などというオカルトじみたもののことか?」

数多「たしかにそれもその一部分だ。けどやっぱわかってねえよ。そんな表に浮き出てきた誰でも知っている事実しか挙がってこねえ時点でな」

博士「他に利用価値があるというのか?」

数多「あるぜ。何十何百とな。そうだな、例えば――」





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