690: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/01(土) 11:18:38.80 ID:31eSI50lo
結標淡希はビルの屋上に立ち、ある建物を眺めていた。
それは第一〇学区にある学園都市唯一の少年院。
結標「あそこに……みんなが……」
結標淡希のかつての仲間たちの居場所。この少年院の遥か地下にある反逆者用の独房の中。
『残骸(レムナント)』を強奪するという学園都市に対する謀反の罪により、無期限で監禁されている。
それが九月中旬の出来事だから、あれから半年以上の時間が経っていた。
つまり、彼女の仲間たちはそれだけの長い時間あの中で過ごしたことになる。
だからこそ早く助けねば、と結標は建物の様子をうかがう。
周りは一五メートルの壁に囲まれており、その上から覆いかぶさるようにたくさんのワイヤーのようなものが張り巡らされている。
結標はあれが何かを知っていた。
結標「……『AIMジャマー』、か」
『AIMジャマー』。
そのワイヤーから特殊な電磁波のようなものを流すことで、能力者のAIM拡散力場を乱反射させて、自分で自分の能力に干渉させるように仕向ける装置。
能力者は能力の照準を狂わせられ、下手に使うと自滅しかねない危険な状態に陥ってしまう。
例えば彼女があの場で能力を使った場合、物がどこに飛んでいくかわからないし、何が飛んでいくのかもわからなくなる。
つまり、実質能力者はチカラを封じられるに等しい状況となるということだ。
少年院の建物から距離的には二〇〇メートルくらいはあるビルの上、そんな位置でもその影響が出ている感覚があった。
能力が使えなくなるというほどではないが、ずっとその場にいたらどうにかなってしまいそうな違和感が。
そんな感覚を味わいながら結標は携帯端末を開き、時間を見る。
『03:59』。
結標はその時刻をずっと見つめる。
まるで何かが来るのを待つように。
十数秒後、時が動く。
『04:00』。
瞬間、
結標「……情報通りね」
少年院から発せられていた嫌な感じが途切れた。まるで電源が切られたストーブの熱気のように。
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