結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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691: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/01(土) 11:20:37.61 ID:31eSI50lo


 結標淡希は二つの情報を手に入れていた。
 一つはかつての『仲間』たちの居場所。それを知ることができたから今ここに立っている。
 そしてもう一つは、少年院のセキュリティーについての情報だ。
 本日、午前四時にAIMジャマーをメンテナンスするために、一五分間だけ一斉に停止させるというもの。
 つまり、少年院内で使用がほぼ不可能だったチカラが満足に発揮ができるということ。
 とは言っても、受刑者たちは何かしらの能力の使用を妨害する措置を施されているため、このタイミングで能力を使って脱獄などとはできないわけだが。
 だがそれは、外から侵入する結標にとっては関係ないことだ。ただの侵入するチャンスでしかない。

 少年院側も馬鹿ではない。こういう状況になったら、外から仲間を救出しようとする輩から攻撃を受けることを想定していないわけがない。
 いつもより多めの人数の警備兵が配置されており、装備も暴徒鎮圧用の銃火器はもちろん、駆動鎧を着た者も複数配置されているという堅牢な布陣となっている。

 シュン。空気を切るような音と共に結標淡希の姿が消えた。
 彼女は一体どこに行ったのか。


結標「……よし、無事侵入成功、と」


 結標は少年院の敷地内に侵入していた。
 監視カメラやセンサー、監視している警備兵の死角となる僅かな隙間に。
 彼女はメンテナンスの情報と一緒に内部図面とそのセキュリティー情報も得ていた。
 それを全て頭の中に叩き込んでいる。今の結標なら少年院の図面にその情報を正確に書き込めるだろう。

 結標は周辺の状況を確認しつつ小刻みに短距離テレポートを繰り返し、警備の穴をつく。
 穴と言っても本当に僅かな隙間だ。針に糸を通すような精密な計算や動作を求められる。
 それに彼女が把握しているのはあくまで書面上のセキュリティ。
 実際の現場がそれ通りに動いているとは限らない。
 だから、


警備兵A「――ッ!? 何者だ!?」

結標「くっ」


 結標は警備で廊下を歩いていた警備兵の目の前にテレポートしてしまった。
 武装した男だ。軍用のヘルメットやチョッキを着込んでおり、脱獄犯制圧用の機関銃を手にしている。
 この場所は監視カメラ等の機械的なセキュリティは避けられる場所だった。
 そんな場所に警備の人間が配備されていないわけがない。
 そのためこのようなバッタリ鉢合わせが起こってしまう。

 しかし、結標は冷静だった。
 即座に警備兵の後ろにテレポートする。
 標的を見失った警備兵が辺りを見回す。すると、警備兵が被っていたヘルメットが消え、生身の頭部が露出した。
 結標によるテレポート。警備兵の頭部の防御力が一気にゼロとなる。
 男が彼女が後ろにいることに気付き、後ろへ向くより早く、結標は軍用懐中電灯で後頭部を強打した。

 後頭部へ一撃をもらった男は、意識が消え床に倒れる。
 脅威の排除を確認した結標は、周辺を警戒しつつ先へと進む。
 目的地は地下にある反逆者用の独房。
 残された時間は多くはない。一刻も早くたどり着かなければ。
 このチャンスを逃せば、次の機会など未来永劫来ないに等しいのだから。


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