結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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692: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/01(土) 11:22:13.26 ID:31eSI50lo


 結標が少年院へ侵入している同日同時。御坂美琴と打ち止めが宿泊している第七学区のホテル。
 時間が時間のため大半の宿泊客は眠りについている。それは少女二人も同じことだろう。
 だからホテルの廊下はほとんど人通りがなく、深夜勤務のホテルの従業員がたまに通るくらいか。

 そんなホテルの七階にある廊下。そこに異質な者たちが闊歩していた。いや、者と呼称するのは間違いか。
 それは四足歩行の犬型のロボットだった。大型犬くらいの大きさがあり、全身が銀色のメタルで包まれていて、目部分には バインダーのようなものが付いている。
 犬型ロボは全部で五体いた。それぞれが違う方向へ注意を向けながら、堂々と廊下の真ん中を進んでいく。

 御坂美琴は否定していたが、ここはいわゆる高級ホテルである。
 第三学区のランクの高いホテルに比べれば確かに下だろうが、紛れもなくここも高級と称して問題ないだろう。
 高級ホテルが高級ホテルとして言われる理由は何か。
 部屋が豪華。料理が豪勢で美味。入浴場を始めとした施設が充実している。
 人によって様々だろうが、真っ先に求められるのは安全性だ。
 上記が点が優秀でも、浮浪者が散歩でもするように中へ侵入してきたら問題だし、お忍びで宿泊している有名人へのところへマスコミや野次馬といった招かれざる客がゾロゾロ入ってきても問題だ。

 そういった点に関してはこのホテルは優秀だった。
 建物に入るための入り口全てには、軍隊上がりの屈強なガードマンが二四時間配置されている。
 内部にはたくさんの監視カメラやセンサー式の警備設置されており、入館許可を得ていない者が映り込めばすぐさま警備の者や警備ロボットに取り囲まれてしまう。
 近くには専属で契約しているアンチスキルの詰め所もあるため、場合によっては完全武装したアンチスキルたちがホテルの中に踏み込んでくるだろう。

 だから美琴は打ち止めのためにこのホテルを選んだ。
 暗部組織のような連中に狙われている以上その辺にある安っぽい宿泊施設に泊まるわけにはいかない。
 美琴は自分が住んでいる常盤台中学の寮に泊める方法も一応は考えた。
 あそこは強能力者(レベル3)以上の能力者たちが住み込んでおり、さらには鬼のように強い寮監が目を光らせている。
 下手なセキュリティよりよっぽど強固な守りをしている寮と言えるだろう。
 しかし、仮にそこを襲われた場合無関係な彼女たちを、美琴たちの事情に巻き込んでしまうということになる。
 そういった理由で美琴はセキュリティ性の高いこの高級ホテルを選んだはずだった。

 だが、犬型のロボットたちは侵入していた。この分厚いセキュリティの中を。
 なぜなのか。
 このロボットたちがこのホテルの中に宿泊している客の持っている持ち物だからか?
 このロボットたちがホテルの警備ロボットの一つで深夜のホテル内を警備しているから?
 理由はこちらではわからない。
 けれど、一つだけわかることがあった。

 犬型ロボットたちはある部屋の前で足を止め、ドアの方向へ目を向けた。
 ここは美琴と打ち止めが宿泊している部屋で、今頃彼女たちはふかふかベッドの中で眠りについていることだろう。
 犬型ロボットのうち一体が口に当たる部分を開いた。その中から金属製のホースのようなものが出てくる。
 その先端からガシャコン、という可変するような音が鳴り、そこから筒状のものが飛び出した。
 それを扉の前に向ける。口径四〇ミリくらいの黒い金属製の筒を。まるで銃口を向けるかのように。

 この犬型ロボットたちが一体何者かはわからないが一つだけわかることがある
 それは、


 美琴たちへと害を為す存在だということだ。


 筒状の物からグレネード弾が発射され、扉ごと部屋が爆破された。


―――
――






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