結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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689: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/01(土) 11:17:25.31 ID:31eSI50lo


S8.AM04:00


 明け方の学園都市。まだ日の光が欠片も見えない夜と変わらない空。
 第一〇学区の街中を歩く一人の少女がいた。
 時間が時間のため遅くまで夜遊びをしたあとの帰り道のように見える。
 しかし、その少女の姿はとてもそんなことをするようには見えなかった。

 長い茶髪のストレートヘアだが一束だけゴムで束ねて横に垂らしている。
 大きな眼鏡を掛けていて、着ている制服はスカートの長さが膝下までで、服装検査を受けても百人が百人合格と言うくらいきっちり着こなしていた。
 一言で言うなら地味だけど真面目そうな少女。とても夜遊びなどするようには見えない。

 そんな少女はまっすぐ目を据えたまま淡々と歩道を歩いていく。
 ある地点にたどり着くと方向転換し、ある建物のある方へと目を向ける。
 それは大きな壁に囲まれている建物だった。一五メートルくらいの高さがあるため中の様子を伺うことが出来ない。
 だが、少女はまるで何かが見えているのかのように、目を逸らさずそれを見つめていた。
 少女は呟くように、


??「…………、始まるんですね……」


 突然、少女の体にノイズのようなものが走る。
 まるで電波状況の悪いテレビに映った登場人物のような。
 彼女の輪郭が歪み、波打ち、変色し。

 最終的には少女の姿は無になり、そこには誰もいなくなった。


―――
――






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