650: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/25(土) 23:19:23.44 ID:jaU2C2/Fo
雨上がり。第一〇学区にあるとある公園。そこには異様な光景があった。
地面に横向きで倒れた自動販売機。投げ出されたように転がったベンチやゴミ箱。
その周辺には空き缶がばらまかれたように散らばっていた。
スクラップの廃棄場みたいになっている一角の中心に一人の少年が転がっていた。
上条当麻。体中に傷や火傷痕のようなものがあり、目に見えてボロボロな少年。
ここに広がった物は全部上条の頭上から落ちてきた物であり、それらの落下物を身に受ける形となっていた。
ベンチやゴミ箱の下敷きになっているが、自動販売機という巨大な物体に押しつぶされなかったのは不幸中の幸いだったか。
上条「…………」
落下物の何かが頭にぶつかったせいで上条は今の今まで気を失っていたのだ。
目を覚ました上条は雲と雲の間にある夜空の星を見ながら考え事をしていた。
上条(――悪いな一方通行。やっぱり俺じゃ駄目だったよ)
上条当麻は心の中でそう謝った。結標淡希を取り戻せなかったことについて。
彼は一方通行に頼まれて結標を追っていたわけでもないし、それどころか彼がそんなことをしたと一方通行が知ったら逆に『余計なことをするな』と怒るかもしれない。
だが、上条の中にある謝罪の気持ちは一向に消えなかった。
上条(――俺じゃ、アイツの『ヒーロー』にはなれなかったよ)
上条は他の人から『ヒーロー』と称されることがある。
彼は自覚はないがよく人助けをしていた。
落とし物を一緒に探すなどという小さなことから、他人の一生を左右する重大な事件に関わるという大きなことまで。
そういうことに頻繁に首を突っ込んだりしたためか、よく『ヒーロー』だなんて呼ばれていた。
だからこそか、上条はいつからか無意識に自分が『ヒーロー』なんだと思い上がった考えを潜在させていたのかもしれない。
自分が『ヒーロー』だから結標を追いかけなければいけない。自分が『ヒーロー』だから結標を救い出してやらなければいけない。
その結果が、この無様に地面へ横たわる自分である。
上条「……クソッ」
情けないヤツだ、そう思って上条は舌打ちした。
動かない身体を無理やり動かして体にのしかかったベンチやゴミ箱をどかす。
上体を起こして雨に濡れた地面へ座り込む。
上条「……これからどうすればいいんだ?」
上条は呟く。
今から結標を追いかけようにもどこにいるかわからない。
もう一度ジャッジメントの一七七支部にいる初春という少女に電話し居場所を探してもらう。
そうすれば結標を再び見つけることができるかもしれない。
だが、見つけたところでなんだ? 今結標に会ったところで何が出来る?
そんな思考が上条の頭の中をグルグルと駆け回っていた。
ジャリッ。
上条の後ろから雨で濡れた砂を踏んだような足音が聞こえてきた。
なんだ、と思い上条は後ろに首を向ける。
上条「……だれ?」
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