618: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/18(土) 22:28:06.53 ID:loyT3wilo
絹旗「テレポーターっていうのは普通の人間とは違う空間認識能力を持っているみたいで、それを特殊な音波を聴覚から脳に流すことによって麻痺させ、能力を超使えなくなるという仕組みです」
絹旗「厳密には能力が使えなくなるというわけではなく、演算式を立てるために必要な物質の位置情報がわからなくなるというだけなんですが」
だけとは言うが、結標はこれが絶望的な状況だとすぐに理解した。
テレポートを実行するためには空間内のどこに何があるかという情報は必須だ。
それがなければ物を正確な位置へ飛ばすどころか狙った物を飛ばすことすら出来ないし、自分自身を転移させた場合自分の身体が壁や床の中に転移するという事故が起きてしまう可能性が高い。
後者に関しては自分も過去に一度経験があるため、絶対に避けたいことだと心の底から思っている。
つまり、結標は今絶体絶命な状況にある、ということだ。
しかし、結標はあることに気付く。
それはさきほど言っていた絹旗の言葉の中にあったものだ。
結標「でも、この状況は長時間続かないんじゃないかしら?」
絹旗最愛は先ほど『空間認識能力を一時的に奪う』と言った。
そもそも能力者の能力を奪ったり、制限をかけるような装置はそれだけ電力が必要となる。
少年院などに使われているAIMジャマーのような装置だって、莫大な電力を消費して効力を発揮している。
それは今回絹旗が使ったものも同様だと結標は推測した。
テニスボールくらい小さな球体の中にあるバッテリーが、それを長時間実行し続けるほどの電力を蓄えているとは思えなかった。
結標の核心を付いた発言に、絹旗は拳を引っ込め、にやりと笑みを浮かべる。
絹旗「ええ、たしかのその通りです。技術班からの話によると長くても一分間の効力しかないそうですよ。ちなみにあれを使って今五〇秒くらい経ちましたので、そろそろ音が超鳴り止むことでしょう。けれど――」
音が鳴り止むということは結標の空間認識能力が戻ってくるということ。
すなわち能力を自由に使うことが出来るということになる。
絹旗にとってそれは避けなければ行けない状況だ。
だが、彼女は不気味な笑みをやめることはなかった。
絹旗は懐から何かを取り出す。
絹旗「弱点が超わかっているというのに、私がそれをそのまま放っておくような超馬鹿な女に見えますか!?」
手に持っているのは機械で出来たテニスボール大の球体。
『空間認識阻害(テレポーターキラー)』。
再び恐怖が現れ、結標淡希の身体にゾッと悪寒が走る。
絹旗「効力が切れて能力で超逃げられる前に、もう一度これを起動すれば、楽しい楽しい一分間の延長戦の始まりですよッ!!」
絹旗が装置を起動しようと動く。結標淡希は脳みそフル回転させて考える。
能力は今現在使えない。
軍用懐中電灯で彼女を殴っても通じない。
その他体術を使っても彼女には通用しないだろう。
だからこそ、結標は今自分がやるべきことが明確にわかった。
結標「――させないッ!!」
結標淡希は軍用懐中電灯を絹旗の目先に向けた。
軍用懐中電灯は鈍器としても使用できる懐中電灯。
本来の用途は。
強力な光の点灯による『目眩まし』。
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