結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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617: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/18(土) 22:24:22.52 ID:loyT3wilo


絹旗「……なるほど、なかなかやりますね。とっさに私の拳を超避けていたとは、大した体捌きです」


 絹旗の言う通り、結標は先ほどの絹旗の顎への一撃を回避していた。
 オーバー気味に体を後方へ仰け反らせることで、拳から逃れていたため意識を奪われるという最悪の結果から逃れたのだ。


結標「貴女の能力……体に何か見えない鎧みたいなものを纏っている、みたいな感じかしら? 肉体強化なら私の攻撃に傷一つ付かないなんておかしいもの」

絹旗「私の『窒素装甲(オフェンスアーマー)』のことまで超忘れられているなんて、私の影も随分と薄くなったものです」


 『窒素装甲(オフェンスアーマー)』。
 空気中の窒素を操る能力で、それは鉄板を拳で叩き割るような破壊力や銃弾をも通さない窒素の壁による防御力を再現できる出力を持つ。
 射程は体表面から数センチほどしかないという欠点はあるが、それを補って余りある攻防一体の強力なチカラだ。
 まあいいか、と絹旗が続ける。


絹旗「さっきからお得意の空間移動(テレポート)を超使っていないようですけど、身体の調子でも悪いんでしょうか?」

結標「…………」


 たしかに彼女の言う通り、結標はこの攻防で自身の転移はおろか物質を転移させるということすら行っていなかった。
 結標は能力を使わなかったわけでもなく使いたくなかったわけでもない。使いたくても使えない状況にあったのだ。
 なぜか。


結標(何なのよこの妙な感覚は? まるで目隠しでもされたかのような、五感のうちの一つが失われたような感覚は?)


 結標はその妙な感覚のせいで能力を使うことができなくなっていた。
 演算が出来ない。例えるなら電卓から数字のキーを抜かれたような。
 何か致命的なモノを奪われた感覚に、結標は陥ってしまっている。

 結標はふと、あることを思い出した。絹旗との戦闘が始まる前に起こったことだ。
 まるで開戦の狼煙を上げるかのように奇妙な音を発した機械製の球体があった。
 思えばあのときからだ。自分が能力を使えなくなったのは。


結標「……まさか」


 地面に転がっている球体に目を向ける。
 その様子を見て、絹旗は小さく笑う。


絹旗「さすがに超気づきましたか? あなたが能力を超使えなくなったのはあれのせいですよ」


 そう言って絹旗は地面を蹴り結標に突っ込む。左右の拳による連打を結標に向けて放つ。
 結標はそれを紙一重のところで避けたり、受け流したりし、何とか直撃を免れる。


絹旗「あの球体は『空間認識阻害(テレポーターキラー)』と言いまして、簡単に言うなら空間移動能力者(テレポーター)の持つ突出した空間認識能力を一時的に奪うジャミング装置ですよ」


 乱打を止めずに絹旗は話を続ける。





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