結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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619: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/18(土) 22:30:19.86 ID:loyT3wilo


 カッ!! 絹旗の視界に閃光が走った。


絹旗「なっ!?」


 とっさのことに絹旗は空いた腕で目を覆って光から守る。
 わずかに遅かったのか視界の色が白一色に染まった。
 そんな状況だが絹旗は冷静だった。


絹旗「目が見えなくてもこれを起動するくらいは超出来ますよ!」


 絹旗は手の中にある球体のスイッチを押す。
 キイィン、という不快な高音が鳴り響く。
 これで再び結標は能力の使えない一分間を過ごすことになるだろう。

 ガキン、ガキン!!

 その音は即座に鳴り止んだ。
 金属と金属が擦り合うような音を上げてから。


絹旗「い、一体何が――」


 奪われた視力が回復してきた絹旗は、真っ先に自分の手の中にある球体へと目を向ける。
 そこにあった球体はただの球体ではなくなっていた。

 二本のボルトが突き刺さり、機能の停止した鉄屑が手のひらに転がっているの見て、絹旗は目を大きく見開かせる。


絹旗「これはもしかしてテレポートによる物質の転移ッ!? 馬鹿なッ!! 一度目のジャミングも超残っていたはずなのになぜッ!?」


 驚愕の表情のまま絹旗は目の前にいる結標の方を見る。


絹旗「ッ――!?」


 絹旗は目を大きく見開かせる。
 結標淡希は両人差し指を両耳に突っ込んで耳をふさぎ、口に軍用懐中電灯の底の部分を咥えているという奇妙な格好をしていた。
 至って単純な対策だ。聴覚から脳へ働くジャミングならその聴覚を断てばいい。
 そんな安っぽい手で学園都市の技術を使った最新鋭の兵器が破られたのだ。

 結標は軍用懐中電灯を咥えたままニヤリと笑い、首ごと軍用懐中電灯を横振りする。
 トン、という肉を断つような音が、絹旗の体から鳴った。
 左肩、右横腹、右太腿。その三箇所には先ほどの絹旗の持っていた武器を破壊したものと同じ種類のボルトが、肉体を押しのけるように突き刺さっていた。


絹旗「あぐぁ……!?」


 テレポートによる物質の転移。
 転移先の物質を押しのけて出現するという性質があるため、どんな強度があるものでもそれを無視することが出来る強力な矛。
 それは窒素装甲という鉄壁の鎧に対しても同じことであった。
 鋭い痛みが走り、絹旗はその場にひざまずく。

 それを見て結標は耳穴をふさいでいた指を抜き、咥えていた軍用懐中電灯を手に取った。





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