結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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608: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/18(土) 22:04:48.48 ID:loyT3wilo


 上条は目的地のある方へと進行方向を変えて走り出す。
 すると、電話の向こうの初春が神妙な声のトーンで、


初春『上条さん』

上条「何だ?」

初春『場所を教えてから言うのもあれなんですが、私はあなたに櫻井通信機器開発所へ行って欲しくないです』

上条「どうしたんだよ急に」


 初春は一呼吸置いて、ジャッジメントが現場で危険を民間人へ説明するときのように、


初春『櫻井通信機器開発所周辺の監視カメラが全部壊されています。今までの傾向からしてこれは結標さんの仕業ではないことはわかります』

上条「……まさか」


 上条は一七七支部で聞いた話を思い出していた。
 結標淡希を追っているのは一方通行や自分だけではない。


初春『はい。おそらく、結標さんを狙っている暗部組織の人たちもその場所にいる可能性が高いです。そんな場所へ一般人であるあなたが一人で行くなんて危険過ぎます』


 彼女の言うことは至極真っ当なことだろう。
 上条当麻はそれを自慢だとは思わないが、今までそれなりの修羅場はくぐってきた経験がある。
 だが、それに対してとある少女は生き残れたのはラッキーだっただけ、と言ってきた。
 たしかにそうかもしれない。前と同じ状況を一〇〇回やって一〇〇回同じ結末に出来るほどの技術や力など上条にはない。
 そんな人間が裏で動いている組織みたいなヤツらがいるところへ行くのは無謀だ。
 しかし、


上条「ありがとう初春さん。けど、俺は行くよ。もしかしたらこれが最後のチャンスかもしれねえんだ。これを逃したら、たぶん俺は一生後悔する」


 上条当麻の意思は変わらなかった。
 彼の中には『結標淡希にもう一度会う』。それ以外のことは存在しない。
 初春は諦めた様子でため息をつく。


初春『やっぱり白井さんの言った通りの展開になっちゃいましたねー。わかりました、もうこれ以上は止めませんよ』


 ただし、と初春は補足する。


初春『今、白井さんが現場に全速力で向かっています。たぶん二〇分くらいで着くと思いますので、それまでは無茶なことはしないでください』

上条「……ああ、わかった」

初春『では、私は白井さんのバックアップに戻らなきゃなんで電話を切りますね。……もう一度言いますけど無茶はしないでくださいよ?』

上条「信用されてねえなぁ。何度も言わなくてもわかってますよ」


 そう再確認して通話を切った。
 電話という並行作業を終えることで、上条の走行速度が速くなる。


上条(俺が着くのが一〇分後で白井は二〇分後。その一〇分で結標が用事を済ませて姿をくらませる可能性だってある)


 そうなったら次会えるのがいつになるのかわからなくなる。
 もしかしたらもう次の機会なんてないかもしれない。
 上条は心の中で謝った。


上条(悪いな初春さん、白井。俺、先に行ってるよ)


 夕日が沈みかけて暗くなった街中を上条当麻は全力で駆け抜けていく。


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