609: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/18(土) 22:07:11.59 ID:loyT3wilo
櫻井通信機器開発所八階にあるモニター室。
その中にある中央モニター前に立っている人影が二人。
一人はモニターの前にあるパネルを操作している白衣を着た、見るからに研究員の男。
一人はその男の後ろに立ち、まるで監視でもしているように腕を組んでその様子を見ている少女。
赤色の髪を二つに結んで背中に流し、軍用懐中電灯を片手に持っている。
結標淡希。
今学園都市の中でトップニュースに上がっている研究施設襲撃事件。
それを引き起こしている張本人だ。
研究員の男は額から脂汗をにじませ、体を震わせながらモニターを操作している。
このことから、彼は結標に脅迫されて仕方がなく動いているのだとわかる。
モニター室の中には、体の至るところから血を流している研究員が複数倒れているところから、その脅迫は『痛い目にあいたくなかったら言うことを聞け』とかそういったモノだと思われる。
必要な作業が終わったのか、研究員は手を止め結標へ背を向けたまま投げやり気味に喋りかける。
研究員の男「ほらっ、終わったぞ」
結標「そう、ありがとう」
礼を言い、結標は研究員の男の後頭部目掛けて軍用懐中電灯を横振りする。
ゴッ、という鈍い音と共に男の体は床に投げ出されて、意識を失ったのか動かなくなった。
軍用懐中電灯を腰のベルトへ戻し、結標はモニターを操作する。
画面には目次のように様々な表題が羅列していた。
ひたすら画面をスクロールしていくと、ある場所でそれを止め結標は大きく目を見開かせた。
結標「……やっと、見つけた」
そう呟く彼女の表情は安堵のようなものを浮かべていた。
その項目を選択して中身を確認する。
内容は間違いないと確認した結標は、メモリースティックをポケットから取り出し、目の前にある機器へと差し込んだ。
モニターを操作して目的のデータをメモリースティックへコピーする。
ディスプレイにコピー状況を表すバーが表示され、パーセントが時間経過とともに増加していく。
……70%、80%、90%。あと少しでコピーが完了する。
瞬間、
目の前の機器に青白い光線が突き刺さった。
結標「ッ!?」
機器から火花が散ったのを見て、結標はとっさに五メートルほど後方へ転移する。
同時に機械は爆発し、火を吹いた。あの場にいたら火傷程度では済まなかっただろう。
一体何が起こったのか。結標は目の前の炎を見つめながら考えていたが、それは即座に中断された。
背中から刃物で突き刺されたかと思うような殺気を感じたからだ。
結標は後ろへ体ごと向ける。
モニター室の入り口に一人の女が立っていた。
ふわふわ茶髪にモデルのようなプロポーションをした長身の女だった。
そんな女を見て、結標は問う。
結標「……誰よ? 貴女」
その質問を聞き、女は少し驚いた様子を見せてから、軽く笑った。
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