結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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589: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/11(土) 23:47:13.85 ID:EQdefISBo


 一方通行はテレポートを使用する赤い駆動鎧を全滅させ、地下施設の奥に来ていた。
 先程までの工場のような背景からは一転して、いかにもな研究施設の中のような廊下を一方通行は歩いている。
 しばらく歩くと、分厚そうな鋼鉄の扉に五種類くらいの認証システムを取り付けた、いかにも大事なモノを置いていますよと言う雰囲気を放つ部屋を見つけた。


一方通行(ダミーや罠の可能性も無きにしもあらずだが、迷っている時間はねェ。入るか)


 首に巻いたチョーカーに取り付けられた、電極のスイッチを入れる。
 地面に転がった空き缶でも蹴るような感覚で、つま先を扉にぶつけた。
 グシャリ、と扉は大きく凹み周りの壁にひびが入る。
 それを見て舌打ちをし、一方通行は片足を膝くらいの高さまで上げ、足裏で押すように扉を蹴った。
 すると扉は床に音を立てて倒れていく。


一方通行「これは……」


 中の部屋を見る限り、そこはモニター室のような場所だった。
 正面の壁に大きいモニターがあり、それと隣接するように左右斜めの位置にもモニター。
 一体化するようにモニター前には、何かのボタンやランプ、小さいモニターみたいなものが付いた機械が置いていた。


一方通行「どォやら当たりだったよォだな。いや、正確に言うなら外れ、か?」


 一方通行はこの部屋に入ってからいくつかの違和感を覚えていた。
 ここはおそらく実験をモニタリングしてデータを収集したり、それらを解析したりするための部屋だろう。
 
 しかし、
 
 人が一人も居ない。パソコンや実験機器といったものがほとんど見当たらない。
 置かれているデスクや戸棚の引き出しが、まるで空き巣にでも入られたかのように乱雑に開かれ、空になっている。
 それらの状況を見て一方通行は確信した。


一方通行「チッ、クソどもは大切なモンを抱えてすでにトンズラこいた、ってかァ?」


 ここにいた研究員は既に大事なデータを持ち出して逃げた後なのだろう。
 すでにここは引き払われる予定だったか、一方通行の襲撃を察知してからか理由はわからないが。
 駆動鎧という兵隊を残して時間を稼がせていたところからして、おそらく後者だろうが。
 とにかく、一方通行にとって欲しい情報は既にここにはないということを表していた。


一方通行「何もねェンだったらこンなところにいつまでも長居してもしょうがねェか。かえ……あン?」


 部屋の中を適当に歩き回りここを後にしようとしたとき、一方通行は地面に転がったトレイの下にある物が隠れているのに気付いた。
 トレイを蹴り飛ばしてどける。そこに落ちていたのはメモリースティックだった。


一方通行「ンだこりゃ? ぎゃはっ、もしかしてこれはアレかァ? 慌てて逃げ出したから落としたことに気付かず、ここへ忘れて行っちまったっつゥマヌケがいたってことかァ?」


 にやり、と口角を上げ一方通行はそれを拾い上げた。
 一般的な電気屋等に並んでいるタイプの物で、自分の持っている携帯端末でも読み込むことができる。
 迷わず一方通行はそれを自分の端末へ差し込んだ。
 特にパスワード等が掛けられているわけではなく、すぐにダイアログボックスが開いた。


一方通行「パスも掛けてねェなンてなァ。こンなクソみてェな組織に俺はあそこまで追い詰められたってのかよ。とンだ学園都市最強様だよ俺はよォ」


 一方通行は皮肉を述べながら端末を操作する。
 中に入っているのは実験データだった。
 いろいろな能力者や機械類の実験データがフォルダ分けされていたが、中でも一番容量を食っていたのは空間移動能力者(テレポーター)の実験データだった。
 そのフォルダを開き中を確認する。中に入っているのは表題通り実験のデータ類だが、一方通行はその中にあった一つのテキストデータを目に付けた。


一方通行「……『空間移動中継装置(テレポーテーション)計画』、だと?」


 一方通行は思わず息を飲んだ。
 直感でわかった。これは絶対に目にしてはいけないものだと。
 だが、これはあの女に繋がる手がかりになるかもしれない、そうだとも感じた。
 だから一方通行は、このファイルを開くことに何の躊躇もなかった。


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