高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「『あいこカフェ』で」
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26:名無しNIPPER[sage saga]
2021/05/16(日) 14:44:06.95 ID:eE/KPeRw0
「ふぅー、は、はぁー……あぁびっくりした……。えっ、アイツですか? アイツなら猫を見に行きましたよ」
「……猫?」

 確か、テラス席の外をたまにうろついている子。準備中にも見かけたよね。猫よけを施してるから、中に入ってることはないみたいだけど……。

「猫がじっと見てるのを不思議がって、店員さん……スタッフさんですか? に聞いていました。この辺りにいる子だって聞いたら、追いかけに行っちゃって……。アイツ、最近いっつもそうなんですよ。何か見つける度に走ってって、それからすぐカメラを取り出して。何撮ってもブレるのに、バイトでお金を貯めてまでカメラを買って――」
「ふふっ……そっか、そうなんだね」
「あ。……スミマセン。あの……」
「ううん、いいよ。お客さんのお話を聞いてあげるのも、店員さんのお仕事ですから?」

 藍子だって昨日やってたし、大丈夫だよねっ。

 ……って、藍子みたいにやってたら私まで他のスタッフさんにどつかれちゃう。それにこの子と再会できたのはすごく嬉しいけど、私は藍子やみんなを手伝う為に飛び出したもんね。ほどほどにして切り上げなきゃ……。
 注文を再度聞くとパスタを2人分と答えた。伝票に書き留めて店内のキッチンへ向かう。立ち上がりかけた彼女を手で制し……カフェへ戻るその直前に、やっぱり1つだけ、どうしても確認しておきたいことがあって私は振り返った。

「ねえ……。あのね。今もまだ、藍子のことは応援してくれてる……?」

 彼女は、またしても目を見開いた。人が意外な反応をする時の仕草。彼女にとって……私の質問は、当たり前の確認だったみたい。

「もちろんです! あー、その……。色々あったんですけど……また近いうちに行きたいって言ってましたよ、アイツ」
「そうなんだ……。ありがとっ。『あいこカフェ』、楽しんでいってね!」

 注文を取り終えた店員としては少し大げさなくらいに恭しく一礼を残して、今度こそキッチンへ。後ろで組んだ右手をひらひらと振ってあげる、秘密のサインを忘れないように。


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