高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「『あいこカフェ』で」
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25:名無しNIPPER[sage saga]
2021/05/16(日) 14:43:36.71 ID:eE/KPeRw0
 最後に見た時よりもかなり大人びている。野暮ったい髪型は、今もお堅い印象はあるけどかなりきらびやかに、オイルケアやドライヤーを念入りにしていることもすぐ分かった。
 でも、そんなことよりここにいたことが。
 急に出会えたことがびっくりして、そしてすっごく嬉しかった。

 彼女も同じく目を見開く。私のカラコン入りの目を見て瞬きを繰り返すと大急ぎでポケットからスマフォを取り出した。見ているのはたぶん、今朝呟いたという「期待を匂わせる」文章。何度も何度も画面と私とを交互で見て、徐々に目と口が大きく開いていく。慌てて顔を上げた先は店内。スタッフさん1人1人の顔を、目を細めてじっくりと見据える。
 ……なんだかひょっとしたら、勘違いされちゃってるのかもしれない。
「もしかして」の意味を、「もしかしてここにいるアイドルは1人ではないのかもしれない」という意味と捉えちゃってるのかも。

 残念、ここにいるのは私と藍子だけ。それに……私がいて、他の子を探すのってどうなの。
 しばらく顔を見せなかったよね? 会えたんだから……少しくらいは……ふふっ。

「……、」

 どう声をかけようか。……そっか、まずはやらなくちゃいけないことがあるんだった。
 私はいま店員さん。藍子を手伝う店員、スタッフさん。ハプニングにはしっかり対処してあげなきゃ。

「……!」

 いったん周囲に気を遣い顔を寄せる……気の毒なくらい、彼女が動揺していることが分かった。相方が藍子のことを女神様みたいに崇めているのは覚えてるけど、この子も私のこと、けっこう応援してくれてたもんね。


「しーっ」


 店員でいながらアイドルバレしたという事実を逆に利用して、イタズラっぽくウインク。至近距離で白い歯を見せて……トドメに、妖笑を添えて……。
 ふふっ、ちょっと刺激が強すぎたかな? 本来ならこんなに接近することのない店員さん。相手が変装しているっていう背徳感。そして、私のことを慕ってくれるっていう感情。
 全部利用させてもらったよ♪ ……利用、って言い方は嫌だから……じゃあ、全部引き出してあげた。こういうドラマよりもドキドキに満ちたことだって、やってみたかったんだっ。
 こういう系は、藍子には通じないし……。ごめんねっ?

 こくん、と無言で頷いたのを確認して、私は顔を離した。残念そうな吐息は聞こえなかったフリ。

 そういえば、もう1人のあの子はどこにいるんだろ。

 藍子の顔を見たらまた卒倒しちゃうんじゃないかな。私服姿でもたまに泡を噴くのに、カフェ制服姿なんて……ね?

 ……ううん。もうあの時とは違うかな。


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