16:名無しNIPPER[saga]
2021/04/18(日) 01:55:18.97 ID:S9RXO5Th0
つま先からやすり掛けされているかの如く『彼女』は摩耗していった。
逃げ出そうとする足に、鎖のように絡みつく想い出が『彼女』を更に苦しめていた。
『なんで、こんな事になっちゃったのかな……』
後悔や悲痛さえ削り取られたそれは、ただの疑問だった。
『私が、間違えたから……?』
そうかもしれない。
あるいは、もっと別の方法があったのかもしれない。
『私が、ちゃんと出来なかったから……?』
そうなのかもしれない。
もしかしたら、彼女がもっと完璧であればこんな事にはならなかったのかもしれない。
だけど、
『私が…………いなかったら』
違う。
それは、それだけは違う。
間違いも失敗もあっただろう。
だけど、彼女がいない方が良かったなんて事は絶対にない。
誰もそんな事を思っていない。
……私だって。
だけど、どれだけ叫んでも彼女に声が届くことはない。
私が見ている映像は、もう過去の事だから。
なのに、今この瞬間も私の心は彼女の心と同期している。
それが、余計に歯がゆくて自分の無力さを痛感させてくる。
33Res/35.62 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20