5: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2021/04/05(月) 00:27:31.17 ID:6ld/3/YM0
「リード、任せてもいいかしら」
「やっぱりここまで来るの大変だったんだろ」
先ほどは強がっていたが、ピンヒールで大型犬の散歩はやはりというかなんというか厳しいものがあるのだろう。
例えカトレアがいくら賢いと言えども何かに興味を惹かれれば、そのほうへ夏葉よりも先んじてしまうこともある。
運動靴であればその程度の勢いには対応できるが、ピンヒールではそれも難しい。
夏葉がコインパーキングから事務所に来るまでの少しの苦労を思って、俺はついつい噴き出してしまう。
「あ。笑ったわね?」
「いや、ばかにする意図はないんだ。ただ」
「ただ?」
「どうにも、そのヒールでカトレアとここまで来た夏葉を想像したら、なぁ」
「やっぱり、ばかにしているんじゃない」
「してないよ。想像して、かわいいと思ったんだ」
今度は褒める、というよりも純粋な感想であったためか、夏葉の顔を見て言うことができた。
だが、それがどうにも夏葉には良くなかったようで、俺にカトレアのリードを手渡すと「とにかく、お願いね」と先へ歩いて行ってしまう。
もちろん、ピンヒールを履いている彼女に追いつくのは容易い。
すぐに俺とカトレアは彼女の隣に並んでしまう。
それが面白くないのか、夏葉は「スニーカーだったら、こうはいかないわよ」とよくわからないことを言っていた。
なら最初からスニーカーで来たらいい、とは言わない。
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