1:名無しNIPPER[sage saga]
2021/04/03(土) 21:12:31.16 ID:4B3dgK4pO
「なんとかしなさいよ! バカシンジ!!」
衛生軌道上に安置された初号機奪還を目的としたUS作戦で、Code.4Bに苦戦を強いられた私は咄嗟にその名前を叫んでいた。
それに応えるように初号機が格納されていた黒い箱に亀裂が生じ、中から光が照射されて4Bを追跡し、そのコアを破壊して撃破した。
ほんの12秒ほどの、出来事だった。
その光景を間近で目撃した私は、目の前の現実を認識出来ず、情けないことに惚けた。
見惚れてしまったのだと、あとから気づく。
心臓の音だけがやたらうるさく響いて、やかましいことこの上ない。ほんと、嫌になる。
コネメガネに3秒早いと指摘された時から薄々気づいてはいたけど、私は、やっぱり。
自覚した思いは質量を得て、赤くコア化した地球の重量に引かれ、大気圏に再突入する。
初号機と共に、真っ逆さまに空へと落ちる。
もう離さないように。離れたくないように。
回収地点に着陸し、回収班を待つ時間が、途方もなく長く感じて、はしたないと思った。
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2021/04/03(土) 21:15:05.37 ID:4B3dgK4pO
「アスカ! 良かった……無事だったんだね」
初号機のエントリー・プラグ内からサルベージされたシンジは、あの時から変化がない。
そんなことは最初からわかっていたけど、だからこそ強く失望した。故に、殴りつけた。
3:名無しNIPPER[sage saga]
2021/04/03(土) 21:18:14.92 ID:4B3dgK4pO
「ワンコくん、大人しくお座りしてた?」
「何も変わらず、寝癖で馬鹿な顔してた」
「その顔、見に行ったんじゃにゃいの?」
コネメガネに尋ねられ、見たままの印象を伝えると、見透かしたようなことを言われた。
4:名無しNIPPER[sage saga]
2021/04/03(土) 21:20:08.60 ID:4B3dgK4pO
「邪魔しないでよ、アスカッ!!」
「女に手をあげるなんて、最ッ低……!」
再会したシンジはまたエヴァに乗っていた。
あれほど乗るなと言われたのに、あれほど辛い思いをして、傷ついたのに。ほんとバカ。
5:名無しNIPPER[sage saga]
2021/04/03(土) 21:22:06.36 ID:4B3dgK4pO
「いきなりケンケンと呼ばれて、驚いたよ」
なんとか第三村に辿り着き、シンジと一悶着があり、アイツが家出してから相田ケンスケが苦笑混じりに苦言を呈した。素直に謝る。
「ごめん。でも、こうするしかなかった」
6:名無しNIPPER[sage saga]
2021/04/03(土) 21:24:15.56 ID:4B3dgK4pO
「アスカ、僕も行くよ」
家出したシンジが帰ってきて、しばらくケンスケの仕事を手伝って、そして初期ロットを看取り、自分もヴンダーに戻ると口にした。
未調整の初期ロットが長くは保たないことは最初からわかっていたことだったけれど、だからと言って設備や薬のないこの第三村では処置出来ず、初期ロット自身もNERVへ戻ろうとせず、だから、どうしようもなかった。
7:名無しNIPPER[sage saga]
2021/04/03(土) 21:26:56.43 ID:4B3dgK4pO
「ちょっと、寄り道するわ」
碇ゲンドウとの決戦に赴く前にシンジに伝えたいことがあった。同行したコネメガネは、コネメガネにしか出来ない布石を打った。
私は寄り道の目的である問いを投げかけた。
8:名無しNIPPER[sage saga]
2021/04/03(土) 21:29:18.78 ID:4B3dgK4pO
私はどうなってもいい。ただシンジのために。
人を捨て全力を出し尽くし、今度こそ死を覚悟した私は気がついたら大人になっていた。
傍らにはシンジが座っていて、裂けたプラグ・スーツから覗く肌を隠そうと寝返りを打ち、自分が恥じらっているのだと自認した。
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