夢の残骸に思いを馳せて
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5:名無しNIPPER[saga]
2021/01/10(日) 19:23:04.35 ID:rddhOFwr0


城を見上げる。この遊園地のシンボルとも言える大きなお城だ。これももはや廃城となり、繁栄の象徴の様な華やかさは消え失せていた。

塗装は剥げ、所々に赤茶けた錆の浸食が見られる。好き勝手に伸びる植物が廃城感を尚一層増し、森の中に忘れ去られた廃墟を思わせる。パーク内のどこからでも見える大時計は他の時計と同じ時に止まり、文字盤のガラスはヒビが入っていた。

遊園地の時を止めているのがあの大時計だというような錯覚すら覚え、あれさえ動かせばかつての華やかな夢の国がまた動き出すのではないかとすら思ってしまう。

そんな妄想を振り払い、時計に背を向ける。また、幼い頃の幻影が自分を呼んでいる気がする。


灰色の空は今の時間を完全に失念させる。この世界の時計は全てが同じ刻に止まり、決して再び刻み始めることはない。

ここに足を踏み入れてどのくらい経ったのだろう。つい先ほどまで外にいた気もするし永い間ここを彷徨っている気もする。幻影と現実が混ざり、過去と現在の光景が重なり合う。

ここでは全てが希薄に感じる。自分の意志すらもどこかボーっとして何か考えているのかいないのか、それすらも定かでない。スマートフォンも腕時計もその存在を忘れ、時の流れを確認しようとする考えすら沸いていなかった。


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