夢の残骸に思いを馳せて
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6:名無しNIPPER[saga]
2021/01/10(日) 19:30:59.49 ID:rddhOFwr0


どの乗り物も今は決して動くことがない。あの日の思い出をなぞりながら歩き続けるとふとざわめきが聞こえてきそうになる。

溢れかえっていた人の声、足音、愉快な音楽と乗り物の駆動音、しかしそれは幻に違いなく、今目にしているのは確かに閉鎖された遊園地であり、夢の残骸だけが宿る廃墟なのだ


ふと足を止めたのは大きな観覧車の前だった。かつて色とりどりの光を放ち、夜の遊園地の中で一際輝いていた観覧車は今はもう光を失い、灰色の曇り空の下で無言で佇んでいる。

ゆったりと動いていたゴンドラは風が吹いても揺れることなく固定され、過ぎ去りし日々を憂いているかのように地面に陰を落としていた。

色褪せたポスターが虚しく笑っている。ところどころ剥がれかけ、掠れて文字が読めなくなっている部分もある、それでも歓迎の言葉とまたおいでというメッセージは読みとれた。

きっと、この言葉を最期に受けたのは自分なのだ。次にこれを見た人物は何も考えず、読むことすらもせずに破り捨てるのだろう。そしてこの建物は取り壊され、遊園地そのものが更地になる。

その跡地に何かが建った後、誰もが少しずつ忘れていくのだろう、この歓迎の言葉も、かつて存在した夢の国も、ここに訪れた人々の笑顔も、楽しかった思い出すらも……

最期…最期の客として自分はここに招かれたのだろうか、それとも何かあるのだろうか。忘れている何かが、自分自身が求める何かが


キィ、と開いている扉が風で揺れている。ゴンドラだ、もう動くはずのないゴンドラが自分を呼んでいる。錆び付き、色褪せ、窓ガラスさえくすんでいるゴンドラ、観覧車の小さな個室へと足をかける。

人一人分の体重がかかったことで揺れるゴンドラ内に入り、穴の開いているイスに腰掛ける。また幼き日々の思い出が脳裏を掠める、しかし今度は今までと違い…ゴンドラが動き出した。


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