夢の残骸に思いを馳せて
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4:名無しNIPPER[saga]
2021/01/10(日) 19:20:45.24 ID:rddhOFwr0


ふと、とある乗り物が目に留まる。なんてことはない、子供向けの小さなジェットコースターだ。まだ何の恐怖も知らなかったあの頃、初めて味わう「スリル」というものに病みつきになっていた。何度も、何度も、もう一回、もう一回とせがみ、親が呆れるまで乗り続けた。

懐かしくなり、列を想定してロープで作られた道に入り、乗り場まで歩いた。そこにはあの日そのままに時が止まったように懐かしい乗り物が待っていた。

横に二人乗れる車両が四つ繋がっている小さな絶叫マシン、手入れされることもなくなった車体は塗装が剥がれ、錆び付いたレールは今にも折れてしまいそうなほどに脆く、頼りない。


それでも自分の目には、あの日の思い出そのままの光景として映っている。笑顔で発車を告げるキャスト、アトラクションの設定に沿った楽しげなアナウンスと音楽…

乗り物がガガガガガと音をあげて走り出す。すぐにチェーンを巻き上げる音とともに速度が緩やかになり、坂を上り始める。上がる高度とともに興奮が沸き上がり、頂点に達するとともに限界まで高められた期待は一気に快感に変わる。

風を切り、右に左に身体を引っ張られ、上昇に下降に身体が跳ねる。そしてその興奮がさめやらぬ内にコースターは減速し、元の乗り場に戻ってきてしまう。だからもう一回、もう一回と、あの興奮を何度も、何度も味わいたくて繰り返し並んだのだ。

今一度、あの時のことを思い出しながら席に座ってみる。母親と並んで座ってもまだ隙間が開いていた席は今見ると狭く、あの日より遙かに高くなってしまった目線はあのときと同じ光景を映してはいなかった…


幼い自分が次はどこに行こうかと楽しげに声を上げる。両親はどこに行きたい?と質問で返し、次はあそこ!と自分で投げかけた質問に自分で答えた。幻影は踊るように次の目的地へと走り出し、やがてふっと消えてしまった。

再び廃墟の中に取り残される。幻影が映し出していた光景はどこか輝いていた。しかし今は塗装が剥がれた瓦礫しかない、瓦礫の中で物思いに耽ていたに過ぎなかった。

行こう。幻影を追っているのか、思い出を追っているのか、自分が何をしたいのかすら判然としないまま、ジェットコースター乗り場から離れる。


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