【ミリマス】帰省できなかったシアター上京組の年末年始
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◆yHhcvqAd4.
[sage saga]
2021/01/05(火) 22:29:27.32 ID:1nFF4fw90
スレが立ったら書きます。大晦日に慌てて書いた話だけで満足しようと思っていたのですが、年始のことまで頭に浮かんできたので書きました。
【概要】
出てくる人:木下ひなた、横山奈緒、ジュリア、白石紬
大晦日の話と、一月二日の話を両方続けていきます。
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2
:
帰省できなかった年末年始 1/9
[sage saga]
2021/01/05(火) 22:30:28.79 ID:1nFF4fw90
【2020年12月31日】
暖房が効いて暖かい自室の中で、木下ひなたはまどろんでいた。突っ伏していた炬燵から頬を引き剥がして壁の時計を見ると、時刻は午後4時だった。仕方が無いことであるとはいえ、大晦日を独りで過ごしたことの無いひなたは、何をしようか、あるいは何をしたいのかも分からないまま、中学校の宿題を卓上に放り出したままにしていた。
以下略
AAS
3
:
帰省できなかった年末年始 2/9
[sage saga]
2021/01/05(火) 22:31:02.47 ID:1nFF4fw90
ひなたの声は震えていた。言えば迷惑になる。だが言わなければ、あとどのくらいこの寂寥感と戦わなければならないのか分からず、途方に暮れてしまうことは火を見るよりも明らかだった。
「今、事務所の方にいるのかい?」
「ああ、劇場は閉まってるからな。ちょっと今の内に片付けておきたい仕事があって」
「……事務所に、行っちゃダメだろか?」
以下略
AAS
4
:
帰省できなかった年末年始 3/9
[sage saga]
2021/01/05(火) 22:31:34.87 ID:1nFF4fw90
そのまま歩き続けるひなたに、自然とジュリアはついてきた。寂しさに負けて大人に縋り付こうとしている自分に仲間ができたようで、ひなたは安心感を覚えていた。北海道に帰るのをやめた自分と同じで、ジュリアも福岡に帰るのは控えたのだと、道中で話してくれた。
「一度ぐらいは家族に会わない正月があってもいいかな、って思ってさ。それに、西日本の雪が酷いみたいで、飛行機が欠航になっちゃってるらしいから、どっちみちあたしは帰れなかったな」
明るい調子で話すジュリアの声を聞きながら歩いていると、もう事務所の入り口へ続く階段の前だった。狭い雑居ビルに二人分の足音を響かせながら階段を上った先に、さらに一人、お仲間が立っていた。
以下略
AAS
5
:
帰省できなかった年末年始 4/9
[sage saga]
2021/01/05(火) 22:32:23.07 ID:1nFF4fw90
少しずつソーシャルディスタンスを取って各々が腰掛け、一人で座っていたソファは定員いっぱいになった。少々不満そうにしながら、紬も蜜柑を箱から取り出していた。ひなたが手に取った橙の果実は少々ひんやりしており、確かな重量感があった。底の部分の皮に爪を挿し込むと、掌にしぶきがかかって、柑橘類特有の酸味を含んだ爽やかな香りが立ち上る。薄皮の破れ目からあふれてきた果汁の甘さが口の中に広がっていく。炬燵でぬくぬくしながら頬張れたらもっと最高だろうな、とひなたは口元を緩めていた。
敷かれたティッシュぺーパーの上には、ほどなくして蜜柑の皮が山と積まれた。途中で紬が煎れた緑茶が、まだほこほこと湯気を立てている。ひなたの隣で、プロデューサーは誰かとメッセージのやり取りをしているようだった。
「なぁプロデューサー、大晦日にまで仕事してたのか?」
以下略
AAS
6
:
帰省できなかった年末年始 5/9
[sage saga]
2021/01/05(火) 22:33:57.22 ID:1nFF4fw90
【2021年1月2日】
横山奈緒は、布団の呪縛から逃れることができずにいた。
寝る前に暖房を切っていた部屋の中は極寒だ。この幸福な空間から少し足を出しただけでも、一月の冷えた空気が肌をぎゅっと握りしめてくるのが分かりきっている。「もう少しだけ」とか「お布団さんが重すぎんねん」とか、自分にいくつも言い訳をしつつも、手を伸ばしてエアコンのリモコンを手中に収めた。手探りで見つけた暖房のスイッチを入れて、そのままボトッと枕元にリモコンを落とした。
以下略
AAS
7
:
帰省できなかった年末年始 6/9
[sage saga]
2021/01/05(火) 22:34:59.77 ID:1nFF4fw90
佐竹飯店も年末年始は完全に閉めてしまう、と美奈子が言っていた。家族と過ごしているのだろうから、そこを邪魔するわけにもいかなかった。何人かの連絡先をぐるぐる眺めていると、テレビから、覚えのある行楽地の名前が聞こえてきた。例年観光客の多い地も、閑古鳥が鳴いている……奈緒の予想した通りだった。顔を上げてモニターを眺めていると、開けた平地が見えた。芝生に覆われて、密という言葉の対極にある。これだ。スマートフォンを握りしめた次の瞬間、奈緒はメッセージアプリのグループに誘いをかけていた。
街を歩く人は少なく、電車に乗っている人も数えられる程度だった。奈緒自身も含めて、みんな、顔の半分以上が覆われている。マスクをつけることが当たり前になってから、見知らぬ人の顔を観察しようとすることがすっかりなくなってしまった。そんな風に変わった自分がこれからもっと変わってしまいそうな気がして、厚着をしているのに奈緒は寒気を感じていた。
ミリオンパークの一角にある古い公園、そのベンチには既に先客がいた。
以下略
AAS
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