【ミリマス】帰省できなかったシアター上京組の年末年始
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7:帰省できなかった年末年始 6/9[sage saga]
2021/01/05(火) 22:34:59.77 ID:1nFF4fw90
 佐竹飯店も年末年始は完全に閉めてしまう、と美奈子が言っていた。家族と過ごしているのだろうから、そこを邪魔するわけにもいかなかった。何人かの連絡先をぐるぐる眺めていると、テレビから、覚えのある行楽地の名前が聞こえてきた。例年観光客の多い地も、閑古鳥が鳴いている……奈緒の予想した通りだった。顔を上げてモニターを眺めていると、開けた平地が見えた。芝生に覆われて、密という言葉の対極にある。これだ。スマートフォンを握りしめた次の瞬間、奈緒はメッセージアプリのグループに誘いをかけていた。

 街を歩く人は少なく、電車に乗っている人も数えられる程度だった。奈緒自身も含めて、みんな、顔の半分以上が覆われている。マスクをつけることが当たり前になってから、見知らぬ人の顔を観察しようとすることがすっかりなくなってしまった。そんな風に変わった自分がこれからもっと変わってしまいそうな気がして、厚着をしているのに奈緒は寒気を感じていた。

 ミリオンパークの一角にある古い公園、そのベンチには既に先客がいた。

「早かったなぁ、紬」

 マフラーに半ば顔を埋めながら、白石紬はちょうどマスクをずらしてお茶を飲もうとしている所だった。水筒から立ち上る湯気に負けないぐらい、呼気が白く膨れている。

「ええ、家に一人、さすがにすることもありませんでしたので」
「膝掛まで持ってくるとは準備ええなぁ。私も持ってくればよかったかもしれへんわ」

 奈緒は肩から下げたバッグをベンチに置いた。

「……ソースの香り?」
「たこ焼き作ってきたんや。せっかく昼時に集まるんやし」
「私も、葛切りを持ってきたのですが……こう寒いと、冷たい甘味より、温かいものの方が良かったかもしれませんね」
「ええやん。女の子にはスイーツ大事やで。ホンマはなー、大晦日みたいに事務所で集まれたらよかったんやけど、プロデューサーさんが無理やって」
「また、お仕事を……?」
「いや、そうやないねんけど……」

 これ見てみ、と言いながら、奈緒がスマートフォンのメッセージを紬に見せた。


 元旦の午後まで大人のリモート飲み会に参加させられてた。
 さっき起きたけど二日酔いが酷い。二日酔いどころか二週間酔いぐらいはある。
 すまん、今日は死体でいさせてくれ。密になる所は避けてくれよ。


 奈緒が送ったスタンプを見終わると、仕方のない人ですね、と紬が溜息をついた。

「そういうわけでな、密にならん所やったら、と思って、ミリオンパークや。散歩しとる人はちょいちょいおるけど、まぁええやろ」
「今日も冷え込みますが、日差しはあたたかいですね。外に出るにはいい日かもしれません……あっ」


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