高森藍子「加蓮ちゃんたちと」北条加蓮「生まれたてのカフェで」
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38:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/25(金) 21:02:10.93 ID:mOMWMpAw0
「しろちゃんの好きなものは、これかな?」
「う、うん……。えと……ううん、わかんない」
「そっか」
「けど、やっぱり、……あの……うん。ほしいっ!」
「じゃあ、開けてあげますね。……じゃんっ」
「わぁ……! かわいいぬいぐるみっ。わたし、これ……すきなのかな。たぶん、すき……!」
「私も、可愛いぬいぐるみは好きなんですっ。お散歩している時に見つけたお店で、ときどき眺めて……つい、買っちゃうこともあるんです」
「ほかにも、ぬいぐるみがあるの?」
「はい。そうだっ。今度、しろちゃんにも見せてあげますね。テレビに出る時に、持っていっちゃいますっ」
「……!」

ぬいぐるみをあちこちの角度から見るしろちゃんは……まだ、自分が分かっていないように見えた。
これまでずっと、世界に楽しみも幸せも、ほとんど見つけられなかった女の子。
藍子のファンだって言うけど、外の世界に目を向ければ、すぐにでも迷子になってしまうかもしれない。

しろちゃんには、しろちゃんのペースがある。もちろん藍子にも。

看護師さんの言葉を思い出して……それと同時に、藍子が立ち上がった。

「今日ご用意したジュースも、ホットケーキも、まだまだいっぱいあるんですよ。この世界には、本当にたくさん。きっと、そーちゃんやしろちゃんが、すっごく好きだよって言えるものも! ……なんて、ふふ。そーちゃんは、加蓮ちゃんっていう好きなものを見つけちゃってるのかな?」
「……うん。かれんちゃんは、大すき」
「ふふっ」
「でも……ほかにも、すきなものが、あるかもしれないの?」
「うん、きっとあるよ。見つけたら見つけた分、笑顔になれるの」
「そうなんだ――」
「それを知ってほしくて、今日は……。今日は、来てくれてありがとうございましたっ。クリスマスのことも、この世界のことも。ちょっとだけ、好きになってくれると嬉しいです」

ぱちん。

音を立てて、白ひげおじさんの前掛けが外された。
これでもう、12月25日はおしまいって合図。


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