高森藍子「加蓮ちゃんたちと」北条加蓮「生まれたてのカフェで」
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37:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/25(金) 21:01:39.20 ID:mOMWMpAw0
「でも、そんなことないんだよ。この世界には、楽しいものも、面白いことも、いっぱいあるんだよ」

詩を諳んじるように続け――ね? と、私へと微笑みかけた。

「私は加蓮ちゃんみたいに、すごく楽しい時間を作ってあげたり、劇的な変化をもたらしたりするのは、あんまり得意じゃありません。
でも……ううん。だからその分、私はそーちゃんとしろちゃんに何があげられるかなって、ずっと悩みました。
加蓮ちゃんが、いっぱい幸せを積み重ねてあげてね、って言ってくれてからも、ずうっと」

3つのリボン付きのプレゼント箱を、しろちゃんの前へと並べてあげた。
しろちゃんは、しばらく悩んで……わかんない、と答えた。

どれを選べばいいか分からない、という意味ではなくて。
藍子の言葉に対する答えを、見つけられてないって意味。

「クリスマスは、もうすぐおしまい。明日になれば、私も加蓮ちゃんも、そーちゃんとしろちゃんも、看護師さんも、それぞれがまた、違う生活が始まります。
だから今日、そーちゃんとしろちゃんに伝えてあげたかった。
楽しいことはいっぱいあるんだよ、選べるんだよ、って……。
いつかお別れが来ても足りるように、言いたいことも伝えてあげたいことも、幸せを積み重ねるのと同じように。何度だって」

「……えっと……」
「ごめんね、ちょっと難しかったかな……。そーちゃんの好きなものを探してね、ってことだよ。看護師さん。よければ、このツリーごと持って帰ってください。おふたりに……ううん、病院にいるみなさんにも。好きなものを、何か、見つけてほしいんです」
「…………」
「1つでも、2つでも……。好きなものを、好きなだけ。幸せは、1つだけじゃなくていいんですから。そして、好きなものを見つけた分だけ、これから先も、楽しいことを見つけられるって思うからっ」

ツリーの足元まで歩いたしろちゃんの指先が、桃色のプレゼント箱を掠める。はい、とリボンをモミの木の枝から外してあげて、藍子が箱を渡してあげる。


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