2:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/24(木) 05:38:31.53 ID:uyzFntxd0
そんな豊橋と物理的な距離が近くなったのは、秋の席替えの時だった。
一クラス二十七人、どこにでもある普通科高校の一年生の教室。廊下側から数えて二番目の列の一番後ろから一個前が俺、そしてその後ろが豊橋だった。
豊橋の話は俺も常々耳にしていたし、ましてや同じクラスでもう半年も過ごしているのだ。そういう雰囲気というのにも慣れたつもりだったけれど、実際に近くに彼女がいるとどうしたことだろうか。
「よろしく」なんて豊橋に声をかければ、「ええ」なんて静かなのにやけに通りのいい声が鼓膜をくすぐる。スンと息を吸えば、冬の日の出を想起させるシンと清められたような芳香が鼻を抜けていく。
「豊橋は人型空気清浄機だ」なんて友達が真面目な顔をして言っていたことを思い出した。
「豊橋と同じクラスになってから風邪をひかなくなった」なんて別の友達が言っていたことも思い出した。
その時の俺は笑いながら冗談として受け取っていたけれど、実際に彼女を近くにしてみると、それらもあながち間違いではないんじゃないのかもな、なんて思ってしまった。
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