73:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 00:56:32.68 ID:tRJaplXx0
もう一度呼んで、今度は布団を剥ぎ取った。枕に顔を埋めるようにした彼女は、金色の髪を艶美に、しかし弱々しく乱れさせていた。
様子があまりよろしくない。肩を掴んでひっくり返してやると、苦しげな声を漏らすその顔は、透明な美白というよりいっそ生気がないようだ。
「ん…… おはよう。今日は積極的だね」
紅眼を覗かせ、ちとせは呟く。
「お嬢様、お顔が優れませんよ」
今すぐ医者を呼び出すか、病院に担ぎ込むか――昨夜のうちにもっと様子を見ておくんだった。検討やシミュレーションが頭をぐるぐる回るなか、
「うん、ちょっとくらくらするだけ」
彼女は口を開き、笑う。それから千夜の頬に触れた。その手は、普段なら自由で、いつかは日差しさえ鞄にでも詰めてしまいそうだと思ったものだが、今はむしろ、月下美人、とでも喩えよう程、儚かった。
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