【ミリマス】木下ひなたが外泊する話
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8:飢餓感 7/8[sage]
2020/10/30(金) 18:15:26.80 ID:w3nnd9V30
「10時半か……ヒナ、いつも何時ぐらいに寝てるんだ?」
「いつもは9時半か、10時には寝てるよぉ」

 非日常的な夜を過ごしてウキウキ気分のひなただったが、まぶたが重たくなってウトウトし始めていた。ベッドに寄りかかって座る今でも、このままじっとしていたら夢の国へ旅立てそうだった。まだ夜更かしして、お泊りの時間を楽しんでいたかったが、一日の三分の一近くを毎日奪い取る三大欲求の持つ引力には逆らうのは、困難を極めた。

「……眠たそうだな。あたしもダンスレッスンで体がクタクタだし、今日はもう寝るか」
「うん……あ、毛布の上に寝転がった方が、あったかくなるよぉ」
「え、そうなのか? そいつは知らなかった」

 なんか変な感じがするな、と言いながら、ジュリアが先にベッドに入った。


* * * * *

 カーテンで月明かりは遮られて、常夜灯の薄明かりは室内の輪郭もぼやけさせている。ほんの十数センチの距離にあるはずのジュリアの顔も、ひなたの目には映らない。充電器に接続したスマートフォンが待ち受け画面を表示してまた消灯するまで、その不自然に明るい光が天井向けて投げかけられていた。仰向けになって一人分の就寝スペースに何とか収まっているひなたは、一人で寝る時のように手足を投げ出したかったが、すぐ傍に感じる体温に直接触れてしまうのが気恥ずかしく思えて、腹の上で両手を組んでじっとしていた。ハロウィンイベント向けの資料にあった、棺に収まるヴァンパイアみたいな格好だと自分では思っていた。

「ヒナ」
「ん……何だい?」
「ああ、起きてたか。……少しは元気出たか?」
「あれ、プロデューサーから、聞いたのかい?」
「ちょっとだけだよ。ヒナの目がな……なんか、捨てられた犬みたいに見えて、ほっとけなかったんだ。上京組だと、ヒナが一番年下だしな」
「……そうかい。やっぱ、顔に出ちゃうんだなぁ」
「いいじゃねえか。何考えてるか分からねぇヤツより、ずっといい」
「うん……ありがとう」
「なあ、今度料理教えてくれよ。プロデューサーにも『食生活をマシにするため少しは自炊できないか』って、今日言われちゃってさぁ」
「いいよぉ。まだまだあたしも勉強中だけども」

 そんな風に言葉を交わし合っている内に、段々と二人の間に交わされるやりとりのペースが落ちていき、ひなたの方が静かになった。投げかけられる音声に何かの返事をしてはいたが、何と答えているのか、ひなた自身にもよく分からなくなっていた。


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