高木社長「ねぇ、キミぃ…」
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64:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 21:05:29.78 ID:V4s4JV6AO
「社長、こんなチンケなビルで満足しないでよね?いつか私が…あの時押しかけてきた小娘が、水瀬財閥だって持ってないような大きな事務所にしてあげるんだから」

 彼女が押しかけてきた時は面食らったものだ。私など父親の知り合いの中でも末端の末端。向こうからすれば胡散臭い業界人でしかなかっただろう。しかし、彼女はそんな薄い縁を伝って、握りしめてここまでやってきた。その意志の強さを美しいと思った。だからこそ、彼女をうちに入れたのだ。

「最後にこれだけは言っておくわ…ありがと…」
以下略 AAS



65:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 21:06:22.89 ID:V4s4JV6AO
07

「おはようございます〜」

「おぉ、三浦君。おはよう」
以下略 AAS



66:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 21:07:09.14 ID:V4s4JV6AO
「なんだか凄い勢いで伊織ちゃんが走って行ったんですけど…」

「そうか、入れ違いだったか…ところで三浦君、君は今日オフではなかったかね?」

「えぇ、そうだったんですけど…近所のパン屋さんに行って帰ろうと思ったらいつの間にか…」
以下略 AAS



67:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 21:07:51.89 ID:V4s4JV6AO
「それならば送って行こう」

「えぇ…そんな、悪いですよ」

「何構わないよ。ちょうど暇していたところでね」
以下略 AAS



68:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 21:08:41.64 ID:V4s4JV6AO
「それでそこのパン屋さんが少しおまけしてくれたんです」

「ほぅ、それは良かったね」

 車内では他愛のない話が弾む。本来ならば同年代の女性…うちで言えば律子君くらいと話をしたいところだろうが、そんなことは微塵も出さずにこんな中年の相手をしてくれている。全くできた子だ。


69:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 21:09:29.27 ID:V4s4JV6AO
「ふぅ…」

「社長さん?どうかしましたか?」

「いや、少し考えごとがあってね」
以下略 AAS



70:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 21:10:35.50 ID:V4s4JV6AO
「あら?私もしかしてクビになるんですか?」

 クスクスと笑いながら答える彼女に揶揄われるのは嫌な気はしない。

「いや、君程の逸材がこんな弱小事務所で燻っているのは申し訳なくてね…それに君の夢は『運命の人』を見つけることなんだろう?」
以下略 AAS



71:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 21:11:27.70 ID:V4s4JV6AO
「うーん…そうですねぇ、でもね、社長さん。私、ここに入る前にバイトをクビになってるんです」

「ん?あ、あぁ…」

「運転免許も二年かけても取れませんでした。手早く、器用にするっていうのが苦手なんです」
以下略 AAS



72:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 21:12:12.85 ID:V4s4JV6AO
「普通の事務所じゃあ、タレントの送り迎えを社長が自らなんてしませんよ。そんな社長がいる事務所だから、765プロは温かいんです」

「…」

 私にとってはこんなこと普通のことだ。社長にとって、社員やアイドルは宝なのだから。それを上手く伝える方法を考えているうちに彼女は続ける。


73:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 21:12:57.75 ID:V4s4JV6AO
「知ってますか?社長、私ね、今日みたいに間違えて事務所に来ることはあっても、事務所に行こうとして間違えることはないんですよ?」

「…ほう、それはまたどうしてかな?」

「私にもわかりません。でもね、もしかしたら、それは私があの場所に惹かれてるからかもしれない…って思うんです」
以下略 AAS



74:名無しNIPPER
2020/09/22(火) 21:13:46.97 ID:V4s4JV6AO
「あら、もう着いちゃいましたね」

「お、ほ、本当だね」

 バックミラー越しに三浦君に見惚れているうちにどうやら車は彼女の家の前まで来ていたようだ。(事故が起きなくて本当に良かった)
以下略 AAS



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