ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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62:名無しNIPPER[saga]
2020/10/10(土) 22:37:06.04 ID:mG1v5QBi0
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 しばらく後、村を出立した自分達は再びジャングルの中を歩いていた。

 先頭を歩くのは案内人のティガー。その後ろにトラム、ゴルドルフ、師匠と続き、殿を自分が任されていた。正確に言えば、自分の後ろに荷物を運ぶゴーレムがいるが。

 ゴルドルフが買い取ったというゴーレムは、石から削りだされたような質感をした、巨大な馬の形をしたものだった。荷物を運ぶにはその方が都合がいいのだろう。全員分の装備を背負わされているが、よろけもせずについてくる。

 本来なら、実用レベルのゴーレムを作成・使役するには莫大な資産と相応の魔術の腕が必要になる。基本的にニューエイジの魔術師には両方ともないものだ。

 だがこのゴーレムは、この森の中でだけ使うことを想定して造られたものらしい。莫大なマナと閉鎖された空間という、神秘を行使するにあたって都合のいい環境によって成立させているのだという。

 使用されている呪体は粗悪品だが、この発想は面白い、とは師匠の言だ。本来、魔術師は魔術の成立に資材を惜しんだりはしない。ギリギリでしか動かない術式など、時計塔の格式ある魔術師たちにとって価値は無いのである。新世代ならではの発想という訳だ。逆に言えば、金銭で賄えたのも所詮はその程度の出来だからである。

 遺跡に向かうのはこの5人と1体だけだ。残りは怪我人と、その治療に当たっている者達で、捻出できる限りの人材がこのメンバーだった。

 村を出てから休みなしで一時間以上歩いているが、自分の前を歩く師匠は何とかまだ置いていかれずに済む程度には歩調を維持していた。装備を全てゴーレムに預けているからか、ティガーが進む速度に気を使ってくれているのか。体力がついたという線はおそらくない。

 その証拠に、疲労に震えた師匠の声が飛んでくる。

「……も、もう2時間くらいは歩いたんじゃないか?」

「……まだ1時間と12分です」

 ちなみに前回時間を聞いてきてから、まだ10分くらいしか経っていない。

 遺跡まで、歩いておおよそ6時間。休憩などを含めても、日が落ちるまでには辿り着ける計算だ――神霊の襲撃で全滅したりしなければ。

 前を歩くゴルドルフが、時折ちらちらと振り向いて後ろを歩く師匠を窺い見る。この一時間で既に何度も見た挙動だ。

 当然ながら、道中神霊が襲撃してくる可能性、及びその際の対処について、出発前に彼らから訊ねられる場面があった。

 その際の師匠の返答は、完璧とは言い難いものだっただろう――『理由をここで話すことはできないが、遺跡に着くまで神霊に襲われることはない』の一点張りだったからだ。

 詳細は遺跡に着く前に話すとのことだったが、ゴルドルフは出発してからずっと不安げにきょろきょろしている。自分も彼ほどは態度に出していないつもりだが、不安さはあった。

 村では話せない理由とはなんなのだろう?

 単純に考えれば、村の中にテスカトリポカの協力者などがいるというところだろうか。村にいる特定の誰かに聞かれては困る?

 だが、そもそもあの神霊は村を丸ごと焼き払おうとしていたし、意思疎通が出来るようにも見えなかった。

 では単純に、村人を不安にさせない為? いや、それもないだろう。現在村で会話レベルの英語が出来るのはティガーくらいだという話だったし、不安にさせるということは、その対応策が存在しないことを暗に示している。

 思考を続けながら、半ば無意識に師匠の背中を追う。結果としてそれらしい答えを見つけることは出来なかったが、時間は早く進んだ。

 代わり映えのしない木々が鬱蒼と立ち並ぶ風景に、少しだけ変化があった。進む前方が、まるで広場の様に――というほど広くもないが、少しだけ平らに開けている。

 その手前でティガーが立ち止まり、振り返って声を上げた。


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