ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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60:名無しNIPPER[saga]
2020/10/10(土) 22:35:52.31 ID:mG1v5QBi0

「……冷たい?」

 口に入れた途端、まるで氷水のような冷感が舌を刺す。不快ではない。むしろこの密林に入ってから一番の清涼感だ。すーっとした空気が喉から鼻に抜けた。

 煮沸した水だと言っていたが、冷ましただけでこうなるとは思えない。この村に氷などないだろうから、これも魔術だろうか。

「ふむ、錬金術の一種だな。魔術というよりは薬の調合に近い。ハーブなどのエキスで冷たいように錯覚させているんだろう」

「師匠?」

 気づくといつの間にか師匠が傍に立って、すんすんと水瓶の近くで鼻をひくつかせていた。さらにスプーンを使って掬った水を口に含み、検分するように舌の上で転がす。

「なるほど、呪体の類は一切使っていないようだ。これならどんな魔術薬を服用している魔術師でも飲めるだろうな」

 呟きながら先ほどゴルドルフが魔術で造ったコップを手に取る。掲げて日に透かしたり指で弾いたりした後、師匠はそれに水を汲んだ。

「"変化"の魔術か。ワンカウントでこの精度。あの年齢にしてはそつがない」

「……もしかして、拙達の話を聞いていましたか?」

「どんな話をするのかと思ってね。名ばかりのロードとはいえ、私が近くにいれば彼も話しにくいだろう」

「イッヒヒヒ、盗み聞きとは良い趣味してるな!」

 今まで静かにしていた腰のアッドが茶化す。あまり趣味のよくない行為だというのは師匠も思っていたようで、降参するように小さく両手を上げた。

「いざとなれば助け舟は出すつもりだったさ。その必要はなかったようだが」

「気にしていませんから。それよりも師匠、調べ物は終わったんですか?」

「ああ、大体のところはな。食事が終わったら遺跡に向かうとしよう」

 何の気なしにそう呟く師匠には、緊張のきの字も見えない。神霊に襲われるかもしれないというのに、この余裕ぶり。

「神霊がどうして村を襲ったか、分かったので?」

「まあ、そうだな。だがその話は後にしよう」

「おいおい、勿体ぶるじゃねえか! シャーロック・ホームズでも読んできたか?」

「無意味に情報の開示を遅らせたりはしない。理由があってここでは話さない方がいいというだけだ」

 師匠はそういうと、皿に残っているサンドイッチを掴んだ。一口齧ると、ほう、と感心したように頷いて見せる。



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