ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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名無しNIPPER
[saga]
2020/10/10(土) 22:34:27.73 ID:mG1v5QBi0
「ああ、我々が遺跡探索に出ている間に、怪我人と治療で残るメンバーに食べさせる食事なんかについてな。我々の持って来た携行糧食の一部と交換という条件になったが、別によかろう? 何しろメンバーの半数以上を置いていくからな。だだ余りだ」
どうやらゴルドルフの側も遺跡へ向かう際の準備をしていてくれたらしい。その辺り、自分と師匠は手つかずだったのでありがたいことだ。
「それよりも冷める前に食べると良い。この気候だ。遺跡までは持っていけん。材料も村の畑から分けて貰ったものだからな。キャンプを張ったところで、これ以上まともな料理にはありつけんぞ」
「……では、御言葉に甘えて……いただきます」
師匠を待つべきかとも思ったが、それまでつんけんした態度のこの少年と一対一で間が持つとも思えなかった。
皿からサンドイッチをひとつ手に取ると、生地からはほんのりとした温かみを感じた。出来立てなのだろう。倫敦の朝であれば湯気が立っていたかもしれない。
もぐり、と生地に歯を突き立てる。
「これは……」
一言でいえば、それはとても美味しかった。
薄く焼かれた生地は、噛み千切るのにほとんど苦労はしない。だが口の中で二回、三回と噛み締めると、途端にもちもちとした感触と香ばしい匂いを伝えてきた。
中に入っているペーストの正体は、マッシュポテトにトマトソースを混ぜたものだろう。滑らかな舌触りと、爽やかな酸味。だが不思議と濃厚さを感じさせる。マッシュポテトに混ぜ物をするなら、よほどバランスに気をつけないとべしゃべしゃになってしまうのだが、これは上手く調理されていた。
まったりとしたポテトの味を舌の上で楽しんでいると、僅かにぴりっとした刺激が走る。アクセント程度に唐辛子が混ぜ込んであるのだ。トマトの酸味との相性は抜群で、あまり量を食べない自分でも食が進む。
さらに食べ進めると、小さくて丸い感触をペーストの中に見つけ出す。それはどうやらソテーした豆類らしかった。皮が弾けるぷちぷちとした食感が楽しい。柔らかすぎも固すぎもせず、というのは炒め加減に気を使っている証拠だ。
イゼルマでのお披露目会や、魔眼蒐集列車の食堂車で供された食事は、見た目も美しくプロの仕事を感じさせるものだった。
だが個人的には一流のレストランで出されるような格式ばった料理よりも、このサンドイッチの様な、評判の良い軽食スタンドで出されるようなものの方が性に合う。
そんな感想をこちらの表情から読み取ったらしく、ゴルドルフは自慢げな表情を浮かべた。屈託のないその笑顔は、出会ってから初めて年相応さを感じさせるものだ。
「その……とても美味しいです。料理がお好きなんですか?」
「好きという訳ではないが、必要に駆られてという奴だ」
「ムジーク家は錬金術の大家だと師匠から聞きましたが……使用人などはいらっしゃらないので?」
魔術師にとって、財力に余裕があれば使用人を雇ったり、あるいは創り出した使い魔に雑事をさせることは珍しくなかった。魔術師は少しでも根源に近づく為、日々研究や修練に明け暮れている。家事を自分でするような無駄はしないのだ。
こちらの質問に、ゴルドルフは嫌な思い出でも思い出したかのように溜息をついて答える。
「居ることは居るのだがな。純粋な使用人ではなく、教育係も兼ねている。あの連中、部下にやらせることは最低限把握しておくべきだなどと……」
後半はぶつぶつという呟きであった為、完全には聞き取れなかったが。
説明というよりは愚痴になりかけていたことに気づいたのだろう。何かを振り払うように手を動かすと、ゴルドルフはふんと鼻を鳴らした。
「とにかく、覚えたくて覚えたわけではない。ムジーク家が召使いも雇えないような弱小一族だなどと思ってくれるなよ」
「それは、もちろん。ですが……」
「なんだ? 文句でもあるのか?」
「いえ、ただ……覚えたかったわけではなくても、料理そのものはお嫌いではないように見えたので」
サンドイッチの味は素晴らしかった。それが嫌々作られたものだとは、どうしても思えなかったのだ。
自分がそう言うと、ゴルドルフはきょとんとした後、虫歯でも出来たかのように顔をしかめた。ティガーの使っていた皿を、使用済みの調理器具とまとめはじめる。
「あの、片付けなら拙が」
「いいから座っていろ」
ぶっきらぼうにそう言われて、まだ抗するだけの気概は無かった。機嫌をそこねてしまっただろうか。
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