ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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名無しNIPPER
[saga]
2020/10/10(土) 22:32:52.77 ID:mG1v5QBi0
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「お前ひとりか? ロードはどうした?」
ティガーから教えられていた場所向かって、最初に掛けられた台詞はそんなものだった。
村の共同炊事場である。炊事場、といっても水道やガスが整備されているわけでもなく、雨避けの屋根と水瓶、石と土で出来た竃がある程度だったが。森の中にある村ゆえ、火元は一括で管理した方がいいという発想なのだろう。
その竃から引き揚げられたばかりらしい、薄焼きの白い生地にせっせと赤茶けたペーストを乗せているゴルドルフがこちらを見て首を傾げている。
「少し遅れてくるそうです。先に行っているようにと……そちらも、トラムさんは?」
当然のように料理の準備をしているゴルドルフ少年の姿に違和感を覚えながら、姿の見えない付き人のことを訊ねる。
あの質問をした後、師匠は確かめたいことがあるとひとりで荷物置き場の方に戻ってしまったのだ。
トラムについての質問が切っ掛けになったようだが、どうしたというのだろう? 自分はただ、師匠がトラムのことを覚えていなかったことが不思議だっただけなのだが。
……まあ、あまり気にしても仕方ないだろう。
テスカトリポカがこの村を襲った原因は調査隊の中にあると師匠は推理していたが、トラムがその原因でないことは確かだ。むしろ、唯一手放しで信用できるのが彼だと言ってもいい。
「引き続き、怪我人の方を見させている。こっちは大したものを作るわけじゃないからな。適材適所という奴だ」
「適材適所……ですか」
胸中の疑問が声音に表われてしまっていたらしい。あるいは表情にか。こちらを見て、不機嫌そうにゴルドルフは顔を歪めた。
「何が言いたい? 味は保障するぞ。そこの変な女を見てみろ」
「これ美味ぇーーーー!」
絶叫したのは少し離れた場所にあるテーブルについているティガーだった。土色の皿に取り分けた例の白い生地をもりもり消費している。ペーストを乗せた生地を二つ折りにして、サンドイッチのようにしているらしい。
こちらの姿を認めると、彼女は片手で口の中に詰め込みながら、もう片手をぶんぶか振って自分を招く仕草を見せた。
「シンデレラもあったかい内にレッツイート! ビーフとチーズのハーモニーが素晴らしいガオ! モグ、この隠し味は……蜂蜜!」
「どれも使ってないんだけど!?」
少年の素っ頓狂な絶叫に、だがティガーは動じもしなかった。
謎ペーストサンドを大皿に乗せられるだけ乗せると、「爺様と弟と妹にもあげてくるー!」とたったか走って立ち去ってしまう。4人で分けるにはいささか多いような気もしたが。
遠ざかっていくティガーの後ろ姿に、ゴルドルフが慌てたように声を掛けた。
「おおい! 約束を忘れるなよ!」
「分かってる分かってる! 知り合いに言っとくガオー!」
「……約束、ですか?」
完全にティガーの姿が見えなくなってから、台詞の中に出てきた単語について訊ねる。
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