ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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名無しNIPPER
[saga]
2020/09/22(火) 20:31:28.46 ID:kGu0y7r00
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会談が終わり外に出ると、薄霧でぼかされた朝焼けが空を彩っていた。
電気や油に乏しい環境では、太陽の光は重要な資源である。朝早くから村は活気に満ちていた。ところどころから、炊事のものらしい煙が立ち上っている。昨晩の煉獄の様な炎ではない、牧歌的で制御された火の気配だ。
ティグレの祖父であり、この村の村長でもあるというトラトラ・ヤガー氏(本来はもっと長い名前らしいが、ティガーが端折った)との会談はごく短いものだった。
内容も穏やかなものである。昨晩の襲撃から結果的に村を守ったことになる自分達へ感謝の言葉を送りたかったらしい。最悪、村に災いを持ち込んだ異教徒扱いされることも覚悟していたので、少し拍子抜けしてしまった。
「おどりゃあ、うちの村の恩人じゃけえ、好きなだけいるとええ――と言ってるガオ」
「いや、絶対にそんな口調じゃないだろう」
通訳のティグレに師匠が突っ込む場面も見られたが、概ね平和のうちに会談は終わった。村で一番英語が達者なのが彼女らしい。
朝日の眩さに目を慣らしたところで、ふと振り返る。そこにはいましがた自分達が出てきた建物がそびえていた。
自分が寝かされていたものと造り自体はそう変わらないが、見る限りは村の中で一番大きな建築物のようだ。中にはトラトラ氏を始めとした部族の男たちが5人ほど詰めていたが、そこに自分たちが加わってもそう狭苦しさは感じなかったほどだった。
気になったのは、やはりトラトラ達の顔立ちである。ティガーと血縁があるらしいトラトラ氏は彼女と同じく同じくアジア系の顔立ちをしていたし、彼らの内のひとりなどは白い肌にアッシュブロンドの髪を持っており、最初は調査隊のひとりかと勘違いしてしまったほどだ。
昨晩の襲撃で、村人の被害は軽傷者が数名出た以外はまったくなかったらしい。テスカトリポカによる襲撃はほとんど予兆もなかったらしいが、彼らが無事であった理由は――
「あなた方が体を張ってくれたお陰です。お陰で悪印象を与えずに済んだ」
「ふん! 言葉だけの感謝なんていらない――いらぬ、いや、いらんわ!」
師匠の言葉に、私達と一緒に建物から出てきた金髪の少年が、ふんと鼻を鳴らして語気を強める。何か語尾の調子が気に入らなかったのか何度か言い直していた。
昨晩出会った少年であった。明るい陽の下で見ると印象も変わる。今の彼は金色の髪を後ろに撫でつけた、良い家のお坊ちゃんのように見えた。もっとも、真っ当な魔術師なら良家の出身が多いのは当然のことでもある。
やはり調査隊のひとりだったらしい。呼ばれた先の建物で先に村長と話していたのだ。私達が来てからは師匠とトラトラ氏の会話になってしまったので、まだ自己紹介も済んでいなかったが。
「それより、そっちの小娘は何なんだ?」
「小娘……」
もごもごと呟く。明確に年下であろう相手から小娘呼ばわりされたことに対しては怒りこそわかないが、それでも何となく納得できないものはあった。
「私の内弟子のグレイです。グレイ、こちらは――」
「ゴルドルフ・ムジークだ」
師匠の紹介を遮って少年――ゴルドルフが名乗りを上げる。彼はもどかしそうに手を振って声を荒げた。
「そうではなくて、何でこいつは神霊に対抗できたのか、と聞いておるのだ! おかしいだろう、使っていた礼装の強度もそうだが、身体能力も何もかも!」
ちなみにその礼装であるアッドは、現在布で覆われた状態で腰のベルトに括りつけられていた。ゴルドルフはグリム・リーパーと大盾の形状しか見ていないからか、気づいていないようだったが。
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