ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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42:名無しNIPPER[saga]
2020/09/22(火) 20:30:41.16 ID:kGu0y7r00

「いやー、あれは死ぬかと思ったガオ!」

 その死んだ筈の女性が、ケラケラ笑いながら建物に入ってきた。

「……」

 思わず凝視してしまう。すわ幽霊かとも思ったが、どうやら実体はあるようだった。

 貫かれた筈の胸には傷一つない。よく見れば全身のところどころに擦り傷のようなものがあるのは見て取れたが、ともかく動くのに支障は無いらしい。

「……なんで生きてるんですか?」

 聞きようによっては凄まじく失礼な問いかけに、ティガーはにやりと笑って答えてくる。

「死んだと思ったガオ? 残念だったな、トリックだよ」

「いえ、別に残念ではないですが」

「え、そう? て、照れるぜ!」

 たはー、と自身の頭を叩いて見せるティガー。

 こんな感じであちこちに逸れるので話は遅々として進まなかったが、この後、10分ほど掛けてどうにか聞き出した結果、どうやら貫かれたのは幻体だけだったらしいことが分かった。本体は寸前に離脱していたらしい。トカゲのしっぽ切りというわけだ。

「……というか、ティガーさんは魔術師だったんですか?」

「んんー? 魔法なんて使えないガオ」

 きょとんと首を傾げるティガー。嘘ではないようだった。魔術と魔法の違いさえ分かっていない。

 だが、昨晩の戦闘でティガーが獣性魔術を使っていたのは確かである。

 それを指摘すると、しかしティガーは顔の前で手をぶんぶんと否定するように振って見せた。

「あれはうちの部族の人間なら、何人かできる人いるガオ。名付けて一撃必殺モード。まあ使いすぎるとジャガーになっちゃうんだけど」

「……待ってください。いま何か、とても衝撃的な台詞を聞いた気がするのですが」

「ジャガーになっちゃうガオ」

 聞き間違えではなかったらしい。身振り手振りを交えながら、ティガーが説明してくる。

「なんていうか、余所から力を借りてる感覚なんだけど、あんまり使いすぎると取り込まれちゃうみたいガオ。森の中に駆けこんでいって二度と戻ってこなかった人を何人かみたことがあるもの」

「リスクがある、というわけか」

 ティガーの話を聞いていた師匠が呟く。

「しかし、使いすぎると……と言っていたが、日常的にそれを使わざるを得ないほど、この村は常日頃から危険に曝されているのかね?」

「ううん。木を切らなきゃいけないけど面倒だなー、とか思った時に使ったりするから」

「……」

 自分と師匠は思わず沈黙したが、いちいち彼女の発言に取り合っていたら時間がいくらあっても足りないということは既に理解していた。
 
 とにかく、ティガーは生きていたのだ。いまはそれで良しとしよう。

 もっともよく考えてみれば、師匠が村に到着している時点でティガーの生存は推察できることだった。何しろ、自分たちが野営した場所を正確に知っているのは彼女だけなのだから。

 実際、テスカトリポカが撤退した後、ティガーは師匠を迎えに行ってくれたらしい。

「あ、そうそう」

 ぽんと手を打って、ティガーが建物の外を指し示す。

「爺様――村長が呼んでるガオ。歩けそうなら、一緒に来てくれる?」


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