ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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38:名無しNIPPER[saga]
2020/09/22(火) 20:26:23.29 ID:kGu0y7r00

「■■■……」

 獣が唸るような声が、ティガーの喉の奥から発せられた。気づけば、いつの間にかティガーの顔からは一切の表情が抜け落ちている。

 同時、その身体から強大な神秘の気配が噴き出した。濃密な魔力が彼女の肉体を覆い、新たな形を創っていく。

 纏うように形成されたのは黄金の魔力層。そこに陰の如き黒い斑紋が無数に浮き上がる。

 時間にしてみれば1秒足らず。民俗衣装に身を包んだ女性の姿は消え、そこには黄金の獣が生まれていた。

「獣性魔術……!?」

 思わず声を漏らす。

 それはスヴィン・グラシュエートが得意とする、獣性を引きだしその身に纏う術に酷似していた。もっともスヴィンが象るのは狼だが、ティガーの幻体はそれこそ虎のような大型の猫科の動物を模している

ように見える。

 理解が追いつかない。彼女は確かに魔術師では無かった筈だ。隠す理由もないだろう。

「■■■■!」

 黄金の獣が咆哮をあげる。あるいは、本来彼女の部族が使う言語なのかもしれない。

 びりびりと震えるような魔力の衝撃が撒き散らされる。燃え盛っていた足元の瓦礫が瞬時に鎮火した。どうやらスヴィンの咆哮と同じく、魔力を散らす作用があるらしい。

 ここにきて、テスカトリポカの困惑も消えていた。再び鋭い殺気を放ち、獣と化したティガーと相対する。

「待って――待ってください!」

 こちらもようやく意識がはっきりとしてきた。身体もある程度は意思に従ってくれるようだ。破城槌の柄を杖代わりにしてどうにか立ち上がろうとする。

 ティガーの纏う魔力と神秘は、およそ現代の魔術師を基準に考えると尋常でないレベルのものだ。それこそ、本家であるスヴィンすら超えているかもしれない。


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