ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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名無しNIPPER
[saga]
2020/09/22(火) 20:26:57.25 ID:kGu0y7r00
だが、それでもなお、
「■■■……!?」
テスカトリポカには、及ばない。
魔力で編んだ四足による獣じみた機動力は、ほとんど瞬間移動染みてはいた。一瞬でテスカトリポカの背後に回り込み、バン・ブレードを打ち込む。
その一撃を、炎を纏う怪神は避けもしない。回転する黒い刃をそのまま体にめり込ませつつも、カウンターで貫き手を放つ。
肉を切らせて骨を断つ――それは、確実に相手を仕留める為の行いだった。
黄金に輝く身体を、テスカトリポカの手刀が貫く。
体の正中線を、完全に貫通している。あれでは即死だ。
現実感が湧かない――今日会ったばかりの人物だったが、あの底抜けの明るさがこの世界から消えてしまったことを意識が受け入れようとしない。
そしてテスカトリポカは、当然こちらの回復を待つつもりはないようだった。ティガーを縫いとめたまま、逆の手をこちらに突き出してくる。再び例の"音を焼く炎"を放つつもりか。
明確な終末の予感。身体は未だ墜落のショック状態から抜け出せていない。戦闘機動どころか撤退すらできないだろう。
もはやこの身に起死回生の手段は無く――
「■■■■――!」
――だから窮地を救ってくれたのは自分以外の声によるものだった。
「ティガーさん……!?」
有り得ざる絶叫が響く。
身体の中央を貫かれたままの黄金の獣が、死に体のまま、しかし激しい咆哮をあげていた。
断末魔ではない。それは闘争の意志を多分に含んだ鬨であり、魔を払うとされている獣の咆哮だった。
咆哮は一度では終わらない。幾重にも束ねられた其れは、テスカトリポカがその身に纏う炎にさえ揺らぎを生じさせていた。紅の衣の下にある"本体"――炭の様な質感をした肌が見える。
「グレイ」
アッドの囁き。その意味を瞬時に理解する。いまなら――あの音を消す炎は使えない。
「Gray……Rave……」
再度、自己暗示の為の言葉を唱える。距離を取る余力は無かった。消えようとする意識の灯を何とか維持しながら、定められた祝詞を紡いでいく。
テスカトリポカの反応は、やはり迅速だった。
貫いていたティガーをその場に振り捨てると、大きく跳躍して――それこそ木々の背を越える大跳躍を見せて、夜の彼方へ消えて行ったのである。
宝具を持つ自分と炎を消せるティガーを同時に相手にするのは得策でないと判断したらしい。その判断はどこか歴戦の戦士染みたものを感じさせた。
追撃は無理だ。がくり、と膝から力が抜けて地面に倒れ込む。あのまま続けていても、"槍"の解放まで保ったか怪しいものだった。
急速に暗くなっていく視界の端に、同じく倒れ伏すティガーの幻体を認めた。死体が腐食していくように、その黄金の魔力層は崩壊を始めている。
「ティガー……さ……」
彼女の名前を呼ぼうとして。
だがその末尾を結び終える前に、自分の意識は闇中に没した。
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