ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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27:名無しNIPPER[saga]
2020/09/21(月) 20:48:27.84 ID:amUbMXcr0

「ティガーさん――」

 そう思って見やると、ティガーは黄色いブロック状のバランス栄養食をもぐもぐと頬張っているところだった。

 師匠もそれに気づいたようで、何か信じられないものを見るような目つきをしている。まるで可愛がっていた猫がキャス・パリーグの幼生であったことに気づいたような顔だった。

「んぐ……ん? どしたガオ」

「……あの、何を食べておられるので?」

「え……? 晩御飯……?」

 "何を当たり前のこと聞いてくるんだろう?"とでも言いたげな表情で首を傾げながら、さくさくと文明的食料を食べ尽くすティガー。

 ……いや、もはや何も言うまい。わざわざ食料を探してきてくれた事実に変わりはないのだから。 

 師匠もいつもなら発していたであろうFワードは口にせず、不貞腐れたように喉の奥を鳴らすに留めていた。ティガーは意に介す様子もなかったが。

「よーし、それじゃさっさと寝るガオ。二人が寝たら火も消すからねー」

「……あの、火を消してしまっても大丈夫なのですか?」

 おそるおそる尋ねる。猛獣に襲われたりしないのだろうか。

「心配ない。このジャングルに人を襲うような獣は生息していないんだ。この地で見られる最大の肉食動物はジャガーだが、人を襲うことはほとんどない。虫や蛇に関しては、」

 と、そこで言葉を切って師匠がたき火を示す。正確には、そこから立ち上る白い煙を。

「先ほどの葉巻は、植物科の知人から分けて貰った虫除けの礼装だ。煙で虫を払う、という概念は世界各地で見られるものでね。朝まではもつだろう」

 目を凝らすと、暗闇の中に白い煙の帳が滞留しているのが薄ら見えた。

 どうやら抜かりなく準備していたようだ。そういえば人は蜘蛛か蛇のどちらかに嫌悪感を持つものらしいが、師匠はどちらだろうか。何となく両方とも嫌いそうだったが。

 こちらが納得したのを見て取ると、師匠は「寝る」と短く一言残して瞬時に意識のスイッチを落とした。

 透き通るような師匠の寝息を感じながら、自分も目を閉じる。野外、それも密林という特異なシチュエーションだったが、脳を溶かすような気怠さは直ぐに意識を闇の中に引きずり込んだ。



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