ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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名無しNIPPER
[saga]
2020/09/21(月) 20:47:40.96 ID:amUbMXcr0
盤外で感動の目の幅涙を流していたティガーが立ち上がる。感極まった声で叫んだ。
「大丈夫! お姉さんがあと5匹くらい取ってきて3匹ずつ食べれるようにしてあげるガオ!」
「師匠半分こにしましょうティガーさんにこれ以上ご迷惑をおかけするわけにはいきません」
「そうだなレディそれがいい」
その時枝を持っていた師匠が虫を半分に千切る。最後の配慮か、枝付きの方を自分にくれた。
断面からは白い粘液が滴っている。どうやら焼き加減はレアのようだ。
目を瞑って一息に飲みこもうとして――だがどうしても口に運ぶのを躊躇ってしまう。師匠も同じようだった。恐る恐るといった感じで、じっと我々の様子を見つめているティガーを伺う。
「見たことのない種類だが……ミズ・ティガー。念の為に聞いておくが、これを食べないという選択肢は」
「食べなかったら私はこのまま夜の密林に走り去るぞよ」
「ファック!」
ティガーが本気だということを悟った師匠は悪態をひとつ付くと、一息に手の中の芋虫を飲み込んだ。置いていかれてなるものか、と自分もそれに続く。
「……!?」
味は酷いものだった。芋虫は美味しいとどこかで聞いたことがあるが、どうやらピンキリあるらしい。
最初に断面から苦味を感じた。その次は鼻の奥につんとくる刺激臭。大きさゆえに丸呑みは出来ず、なるべく素早く咀嚼するがその度に苦味と刺激は強くなる。涙を滲ませながら飲み込むと、トドメとばかりに臓腑が熱を持ったように暴れ出した。体温が一度くらい上昇したような気がする。
かなり本気で毒を疑うが、ゆっくり10まで数える内に熱は引いた。荷物からタオルを取り出して、汗ばむ肌を拭う。
師匠も凄まじい表情を浮かべて痙攣していたが、しばらくすると落ち着いたらしい。深く息を吐くと、ずるずると体をシートの上に横たえる。
「師匠……大丈夫ですか」
「ああ、なんとかな……」
うつ伏せに倒れている師匠がくぐもった声で返してくる。束ねた髪を解かねば癖になってしまう――そんな危機感を抱いたが、動くのはあまりにも億劫だった。倫敦に戻ったら、念入りに髪を梳かさせてもらおう。
ぼんやりとそんなことを思っていると、横合いからティガーの声。
「そうやって喜んでもらえると、こっちはそれだけでお腹いっぱいだガオ……」
……そうだ。ティガーは一匹しか取れなかったといった。
きっと、彼女達にとってはこれが普通の食事なのだ。その貴重な食料を、村に辿り着けなくなった原因である私達に分けてくれた――それは、感謝すべきことには違いない。
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