ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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25:名無しNIPPER[saga]
2020/09/21(月) 20:46:28.45 ID:amUbMXcr0

「師匠――拙は、師匠を守りたいと、そう思います」

「レディ……」

 手を伸ばし、ティガーから枝を受け取る。

 枝に刺さった白い芋虫は、小ぶりのドーナツほどのサイズ感があった。

「ですから師匠、どうぞ」

 受け取った枝を師匠にパスする。

「……レディ?」

「……拙は、空港で師匠を守れませんでした」

 自分は、師匠にその力を望まれたからこうしてここにいるのに。

 自分は、どんな状況でも師匠を守るべきだったのに――!

「だから拙は……もう二度と、師匠を倒れさせるわけにはいかないんです」

「なるほど、だから私にこれを食べろと」

「はい!」

「いままでに聞いたことが無いくらい、とても良い返事だ、レディ」

 師匠は疲れた様に微笑むと、枝を受け取った。やった。

 師匠に栄養をつけて貰いたい。そんないじらしい内弟子の情念が伝わったに違いない。

 だが師匠は受け取った枝をくるりと回して、こちらの口元に焦げた虫を近づけてくる。

「師匠……?」

「こんなことを言うのは、情けなく思うのだが」

 師匠は眉根を下げ、気弱な表情を浮かべて言った。

「君がいないと、私は死ぬ」

「……なるほど、だから拙にこれを食べて欲しいと」

「ああ。内弟子の体調管理も、師の務めというものだろう」

 嘯く師匠に、にっこりと微笑む。無論、気を使ってもらって嬉しかったからだ。

「ありがとうございます――でも、師匠に食べて欲しいんです。ところで、ここに来るまで何回休憩を要求しましたか?」

「そうだな、私は私のタイミングで休憩を取ることが出来ていた。しかし、君は違うだろう。自分でも分からないほど疲れているに違いない」

「御心配なく。体調管理は出来ているつもりです。そういえば師匠、昨晩は寝坊されていましたよね? 拙が起こさなければ飛行機に乗り遅れるところでした」

「常々から思っていたが、レディ。君は成長期だというのに少しばかり小食すぎやしないかな? その年齢の内に栄養は取っておくべきだ」

「ああ、なんて美しい師弟愛ガオ……!」

「……まあ、迷惑を掛けて掛けられて一人前とはいうけどよ」

 何故かアッドは呆れたような声を出していたが。



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