ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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23:名無しNIPPER[saga]
2020/09/21(月) 20:45:04.08 ID:amUbMXcr0

 パチパチと火が弾ける音だけがしばらく響いていたが、師匠がふと思い立ったように声を上げた。

「そういえば、ミズ・ティガー。君は随分と英語が達者だな」

「そうガオ?」

「ああ、訛りはあるが、十分に通じる。どこで習得を? 君達は外部との接触をしていなかったのだろう?」

「うん。うちは森の外に出るの禁止ガオ。っていうか、村からもあんまり離れちゃいけないんだけど」

「では、どうやって?」

「掟を破って普通に街まで出たガオ」

 ティガーの返答に、師匠はしばらく額を抑え一通り呻いてから、気を取り直すように質問を再開した。

「……まあ、君の部族の掟についてはひとまず置いておこう。だが、いきなり外に出てよくコミュニケーションが取れたものだな」

「まあ、そこはフィーリング? ボディランゲージでやり取りしてるうちに、簡単な単語を覚えたガオ。あとはその積み重ね。あ、でも――」

 ティガーは話すのを忘れてはいけない、というような使命感に満ちた表情で続けた。

「私が本格的に英語を話せるようになったのは、通信教育のお陰ガオ」

「つ、通信教育……?」

 訝しげな表情を浮かべる師匠。多分、自分も似たような表情を浮かべているだろう。フラット謹製の幻覚は、表情もトレースしてくれる。

「ひょんなことから切手を手に入れたことがあったガオ。で、適当ぐちゃぐちゃに住所を書いた手紙を投函したんだけど、何故かそれが極東の島国に届いたの」

「いや、本当に何故だ」

 差し挟まれた師匠の疑問を気にせず、ティガーは続ける。

「その手紙を受け取った子と、文通するようになったガオ。最初はお互いにオリジナル言語を使って遣り取りしてたんだけど――」

「オリジナル言語……?」

「その子が英語の先生になるのが夢だっていうから、教えて貰う練習台になったガオ。それから私はその子を師匠と呼んでいる。ちなみにこの服とバン・ブレードも師匠が私の誕生日に贈ってくれたお下がりを手直しして使ってるガオ。ほらほら、このストラップなんて師匠が自分のに付けてる奴と似ているのを買ってくれたの」

「リーディングならともかく、なんで手紙のやり取りで話せるようになるんだよ?」

「ああ、師匠……今頃何してるんだガオ。この前来た手紙だと、弟分をあくまに取られたとか書いてたけど」

 自分とアッドも思わず疑問の声を上げるが、特に返答らしい返答は無かった。ちなみにアッドに関しては、肘打ちで黙らせるのにも疲れたので今では完全に喋らせっぱなしである。

 ティガーは想い出を懐かしむようにジャガーのストラップをいじりながら空を見上げた後、再び枝を炙る作業に戻る。



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