ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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名無しNIPPER
[saga]
2020/09/21(月) 20:43:49.22 ID:amUbMXcr0
その問いかけに――
自分はほとんど即答していた。この密林に入った瞬間から付き纏っていた違和感。考える時間はいくらでもあった為、言語化も容易い。
「……檻のように感じました。何かを隔てる為の壁がある様な……」
感覚を狂わせるほどの濃密なマナ。現代においては異常とすら呼べる量の。
それを考慮に含めても、この森の閉塞性は奇妙だ。まるで、誰かが手を加えたかのように――
「……やはり、君の感受性は抜きんでているな、レディ」
感心したように師匠が呟く。
「その通り。この森は一種の結界になっている。調査隊が案内人を雇う理由がそれだ。件の部族を共にしなければ、遺跡どころか村にも辿り着けないという仕組みになっているというわけだ。深くまで入ってしまえば、出ることさえ困難だろうな。違和感を察知されるようでは結界としては下の下だが、その強制力は現代魔術では届かない領域にある」
「解除は?」
「どうも地脈に根差した魔術のようで、破るには相当な出力が必要になるらしい。君の"槍"でも一撃では無理だろう。採算が合うかどうか……何しろ遺跡の調査は何一つ出来ていないからな」
リターンがどれほどか分からないのに、高価な媒体を大量に使った結界破りを行うことはできない、と、そういうことのようだ。
アステカの魔術師たちは、その遺跡を隠したかったのだろうか――いや、しかし、それだと――
結局、考えても分からないその疑問を口に出すことはせず、師匠に投げかけたのは別の質問だった。
「……そういえば、アステカで具体的にどんな魔術が使われていたか、というのは分からないんですか? 滅んだのが500年前というなら、何らかの情報が残っていてもおかしくはないと思うんですが」
「全く伝わっていないわけではないが、彼らはコンキスタドールと持ち込まれた疫病によって滅ぼされたからな。アステカ、というよりメソアメリカ文明は他の文明とそれまで交流を持っていなかった為、当時の魔術基盤についてはほぼ喪失してしまっているんだ。ナワルといって、霊的な別の側面の形に変身するという神秘が伝えられているが――」
携帯用のカッターで葉巻の吸い口を切り落とし、火をつける。師匠は考察を重ねながら、合間合間に紫煙を堪能していた。
ティガーが戻ってきたのは、その葉巻が半分ほどになった頃だった。見れば、小脇に大量の木の枝を抱えている。
「ただいまー。あ、マッチ持ってるガオ? たき火するから貸してー」
師匠からマッチを受け取ったティガーは、手早く火を熾した。既に周囲は暗くなり始めており、たき火の灯りが密林の中に陰影を造りだしていく。
たき火を中心に三角で囲むように座る。揺らめく炎の陰に隠れてよく見えないが、ティグレは手に持った細い枝を炙っているようだった。その行為の意味は分からなかったが、彼女のやることにいちいち疑問を差し挟んでもあまり意味はないだろう。
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