ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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21:名無しNIPPER[saga]
2020/09/21(月) 20:43:04.36 ID:amUbMXcr0

「どうかな……正直、あれは異常だ」

 手渡した水を飲んで一息ついた師匠が、ぐったりと疲れ切った声音で呟く。

「魔術を使っている様子はないが、未開部族であるというのなら妙な神秘を受け継いでいても不思議ではない。伝承保菌者の異能は、一般的な魔術とは異なるからな」

「伝承保菌者……ええと、確かそれは」

 記憶のささくれにひっかかったその単語を思い起こそうとするが、どうにも上手くいかなかった。師匠もそれを悟ったらしく、ボトルの中の水をちゃぷちゃぷと揺らしながら講義する。

「伝承保菌者(ゴッズホルダー)は、魔術回路や魔術刻印とは異なる形で継承される神代の神秘だ。有名なのは先の聖杯戦争に協会の枠で参加したマクレミッツ家だな。彼らは文字通り、その身に古い神秘を保持し、それを後世に伝えてきた」

「……拙の"槍"みたいに?」

 ならば、自分もその伝承保菌者ということになるのだろうか。

「広義で言えば、君もその一人に数えられるだろう。とはいえ、ではそれを次に伝えられるか、という点では疑問が残るが」

 師匠の言葉に、今は幻覚の魔術で誤魔化している"顔"の輪郭へ何となく指を這わせながら、首を傾げる。

「継承できるかどうか、という点が重要ということですか?」

「故に"保菌者"というわけだ。例えば現存する宝具はいくつか存在するが、それを手に入れるだけで伝承保菌者と呼ばれるわけではない。仮に何らかの理由で起動できたとしても、次代に継承できなければ、ただ珍しい限定礼装を使用できる魔術師でしかないからな」

 講義をしている内に、調子を取り戻してきたらしい。師匠はペットボトルを荷物に戻すと、入れ替わりに手にした携帯用シガーボックスから葉巻を抜き出した。ちなみにこのシガーボックス、高温多湿の環境でも中身が駄目にならないよう、保管用の魔術を組み込んであるのだとか。

「出発前にも言った通りメソアメリカ文明自体の起こりは古い。彼らが我々の知らない神秘を伝えていた可能性は大いにある。だから時計塔でも、この遺跡に対する期待は高いものとなっているんだ」

「……あの、それならもう少し、その……手綱を握りやすい方をガイドに選んだ方が」

「私が直接選考したわけではない。だいたい、調査はこれで5度目。つまり案内人にも最低4人は被害がでているという計算になる。未だに案内人を引き受けてくれる人物がいるだけありがたい話だ」

「場所だけ教えて貰って、調査隊だけで行くことは出来ないんですか?」

 その質問には直接答えず、師匠は頭上を仰いだ。木々の枝で満足に空も見えないが、だんだんと暗くなっているのは分かる。夜が近い。

「……そうだな。君はこの森をどう思う?」

「どう、とは?」

「あまり考え込まず、第一印象でいい。なにか具体的なものが想う浮かぶならそちらでも構わないが」


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