高垣楓「あなたがいない」
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77: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/19(土) 15:34:44.80 ID:+7YhSCXJ0

「睡眠はいかがですか? 眠れてますか?」
「そうですね……あまり、眠れてないかもですね」
「なるほど……食欲は先ほど伺いましたし……それじゃ、お仕事」

 先生は一言タイミングをずらすかのように呼吸を入れ、私に尋ねる。

「楽しい、って感じてますか?」
「……」
「芸能人の方を診させていただくようになって、皆さん本当にお仕事を楽しまれているんだなあ、と。とても思うようになりました」
「……はあ」
「ですから、高垣さんはどうなのかと思いまして。もちろん人それぞれですから、生きるため、糧を得るためとおっしゃる方もおられますし、義務的にされてる方もおられるようです。
ただ、ここに来られる方、皆さん口にすることがですね」
「……」
「楽しかったはずの仕事が、楽しめてない、と。おっしゃるんです」

 先生の一言が、ひどく私を惑わせる。私は、楽しんでいただろうか?
 ううん、アイドルになってPさんと過ごした日々、慣れないお仕事もとても楽しかった、はずだ。
 うん?
 いえ、楽しかった?

 はっきりと、思い出せない。
 今、楽しめている? 仕事、お酒、日常……




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